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ゆゆ勝手に映画評(2024

mottotokuheikoufoe

「もっと遠くへ行こう。」

シアーシャ・ローナン、ポール・メスカル主演他。2065年。ヘン(シアーシャ・ローナン)とジュニア(ポール・メスカル)の夫婦は、ジュニアの家系が代々受け継いできた人里離れた土地で静かに農業を営んでいた。ある日、そこへテランス(アーロン・ピエール)という見知らぬ男が訪れてくる。テランスはジュニアが宇宙への移住要員候補に選ばれたことを告げ、夫婦を驚かせる。テランスの説明では選ばれたのはあくまでジュニアのみで、ジュニアが宇宙に行っている間は、彼の代わりとなる人物をヘンのもとに置くという。この提案をきっかけに、ヘンとジュニアの静かな生活は大きく変化していく。「LION ライオン 25年目のただいま」のガース・デイビス監督最新作。夫婦、個人のアイデンティティの揺らぎを描いた近未来SFドラマ。

5点!!愛は盲目的なもので価値観は現実のもの。相反するものなのにこの二つはいつもセットだ。そして悲しきかな、結婚生活も現実なので、愛<価値観が勝っちゃうんですよね。結構ぞっとしたけど、サスペンスでもないし、SF入り口の割に全く2065年を感じさせない設定だし、結局のところ、ディスコミュニケーションの話だし、好きな人は好きだし、抽象的な話が苦手な人は苦手な作品だろうなと感じました。しかも、SFの悪い所→時系列の複雑さ、現実かどうかわからなくなるところだけはガッツリ取り入れてるから、終始、夢なの現実なの?過去なの?現在なの?本物なの?偽物なの?と疑いながら観る羽目になり、疑う事が多すぎるから、途中から疲れて流されるままに観ちゃったところが勿体ないかな。もう少し、強弱と焦点を絞ってくれればこうはならなかったかも。偽物の中に本物の愛を見出してしまったヘンと本物の愛を維持する為に偽物を受け入れることにしたジュニア。価値観は変わっていくものだから、ラストから本物のヘンとジュニアが過ごした分の月日が流れたら再び、同じ悲劇が待っているかも知れない。AIだから取り換えればいい?今のジュニアの考えはそうなんだろうな。でも、そもそもこの二人、二人ともが「私が俺が」で終始、YOUメッセージでしか言葉を発していないから、観ていて気分が良くない。価値観の違いは力技で抑え込んではいけないもの。一見、ジュニアの方が超モラハラ男に見えるけど、ヘンも合わせ鏡かというくらい、互いに投げ続けてるだけだからね。色々な初期設定で疑いに拍車がかかる仕掛けになっていて、中々明かされないので疲れた~。2024年劇場未公開・AmazonPrime作品。

「パレード」

長澤まさみ主演他。ここは、想いを残した者たちが集う場所―瓦礫が打ち上げられた海辺で目を覚ました美奈子(長澤まさみ)。離ればなれになったひとり息子の良を捜す彼女は、道中でアキラ(坂口健太郎)という青年や元ヤクザの勝利(横浜流星)、元映画プロデューサーのマイケル(リリー・フランキー)らと出会い、やがて自分がすでに亡くなっていること、未練を残して世を去ったため、まだ“その先”に行くことができずにいることを知る。そしてアキラたちもまた、さまざまな理由でこの世界にとどまっていた。現実を受け止めきれない美奈子だったが、月に一度死者たちが集い、それぞれの会いたかった人を捜すパレードに参加したことをきっかけに、少しずつ心が変化していく。それぞれの秘密と哀しみが癒されたとき、一筋の希望が生まれる―。「新聞記者」「余命10年」の藤井道人監督が長澤まさみを主演に迎え、この世から旅立った人々から残された人々への思いをテーマに描いたヒューマンドラマ。

10点!!主要キャストだけでなく脇役まで超豪華キャストが勢揃いしたのは、監督や制作陣の人脈だろうか?その豪華キャストを生かしきった完成度の高い作品だった。月並みの言葉になるが、優しくて温かい魂の鎮魂歌。長澤まさみは浮き沈みの激しい時期も長かったが、昨年のドラマ「エルピス」辺りから、また演技力と美貌に磨きがかかり、それが本作にも上手く反映されている。廃墟となった遊園地を生き返らせて撮影しているのも良い。神道が普及している日本は八百万の神々の国だから、亡くなった人が神様になる前に傍で見守っているということもあり得ると思う。大切な人を亡くした人々がいわゆる“夢枕”をきっかけに立ち直り始めるのも、こういうことなのだろう。後悔を受け入れるには膨大な時間が必要だから“歩いて探す”という行動はとても有効だ。ただ、悔やんで動かずにいるより、行動した方が何事も消化されやすい。彼らを観ていて、今、生きるのが苦しいという人は、人生を諦めきれない人だということだから、それで亡くなったらもっと苦しくて諦められないのではないかなと気付かされた。生きている時間は短い。今日、明日終わることだってある。自分も、大切な人も。だから伝えなければ、動かなければと思ってはいても、辛くて動けなくなってしまうこともある。そんな私に活を入れるように、やり尽くしたと言えるよう、精一杯生きなければと、あらためて立ち上がる力をくれる作品だった。野田洋次郎の「なみしぐさ」も書き下ろし曲なのでストレートに刺さる。エンドロールの映像も相まって、何度もリピしてしまった。やはり、オリジナル脚本はいいな。どのように話が転がるのか知らないまま観れるから最後までワクワクするし、泣かせてくれる。2024年劇場未公開・NETFLIX配信作品。

「ロ・ギワン」

ソン・ジュンギ主演他。北朝鮮を脱北し、ベルギーに到着したものの、すぐに難民申請を受けることができず苦しい生活を送るロ・ギワン(ソン・ジュンギ)。見知らぬ異国で名前も国籍も証明する術を持たず絶望する彼が出会ったのは、すべての希望を失った女性マリ(チェ・ソンウン)だった。二人は徐々に惹かれ合っていくが、ロ・ギワンの心には変わらず絶望が巣くっていた。「こんな僕でも幸せになる資格があるだろうか」―脱北者の青年の姿をリアルに描いたヒューマン・ラブストーリー。

4点!!脱北ものは綿密な取材の上で描かれている作品が多いので「事実は小説より奇なり」なスリリングな展開が多く面白いものが多いのですが、本作は「人が人として生きる」リアルを優先しているので、韓国エンタメにありがちなド派手な追走激は少なめです。とは言え脱北ものなので辛いシーンもありますが、全体的に「82年生まれ、キム・ジヨン」みたいな穏やかな感じ。ギワンと出会う前のマリの人生が殆ど描かれていないので「幼少期に脱北し射撃のベルギー代表選手になったけど、何らかの事情で辞めて今はマフィアに借金があるけど、親は裕福」という謎キャラクターになってしまっています。そのせいで彼女の人生の切実さが伝わってこず、父親の話も聞かず、自滅している短絡的なキャラクターにも見えてしまっているのが残念。しかし、チェ・ソンウンは「スタートアップ」の時と比べて随分顔が変わったなぁと。パク・シネにそっくりになっていて、韓国メイクだと皆同じに見えちゃう(>_<) あと、なぜギワンの母がなぜベルギーを選んだのかも最後まで明かされていない。ギワンはベルギーに来てから出会った人々にトントン拍子に助けられ、ラッキーだったと思いますが、根本は明かされずにそのままふわっとラブストーリーに着地しちゃった感じです。「人が再び生きる気力を取り戻すのは自分の為ではなく大切な人の為、愛は人生において重要」ってことは伝わりますけど・・・。中国からの入国でもベルギーの難民認定事情は手に入らないまま入国せざるを得ないのかな?それでもヨーロッパの中では認められやすい国とされているから、「何とかなるだろう」と思って行っちゃうのかな。ギワンが「え!?どうやって生きればいいんですか?」って赤ちゃんみたいな顔で驚いてるから知らなかったんだろうと推測するけど・・・。なんか色々と細部が甘いせいで折角の設定が生かされていない残念な作品です。2024年劇場未公開・NETFLIX公開作品。

「ダムゼル 運命を拓きし者」

ミリー・ボビー・ブラウン主演他。飢饉に苦しむイノフェ公国で育ったエロディ姫(ミリー・ボビー・ブラウン)の一番の願いは、人々が毎年、冬を乗り切るのを助けること。ところがある日、裕福な王国の代表がこの国を訪れ、イノフェ公告を救うための十分な資金と引き換えにエロディと王国の王子との結婚を提案される。エロディは迷いなくそれを受け入れ、煌びやかなアウレア王国に渡り、王国の美しさと婚約者であるヘンリー王子(ニック・ロビンソン)に魅了されるが、ほどなくして王国の闇とその闇から人々を救うべく、ドラゴンに捧げる生贄としてエロディが選ばれたことを知る。果たして、エロディは知恵と意志の力だけを頼りに、古代から何世紀も続く王国の闇と暴き、自分自身と公国の未来を守ることができるのか―。悩める乙女がドラゴンに挑む、壮大なクラシック・ファンタジー。

6点!!生贄にはされたけど、何とか脱出してふたつの国を救う話かと思ってたら全然違った(笑)清々しいまでの勧善懲悪&2時間弱ですっきり片付くバトルもの。和解して両国の未来の為に一致団結するんじゃないの?と苦笑いしてしまった。残り20分になってもまだ洞窟で逃げ回ってるから、そこでやっと「洞窟バトルの話だったのか」って気付いた(爆)層がないのは勿体ないです。サンドラ・ブロックとかアンジー系のちょっとゴツいミリー・ボビー・ブラウンより妹のフロリアの方が可愛らしくて姫らしかったけれど、洞窟ですごい大怪我してるのにクライミングとかしちゃうサバイバル能力を観て納得。極寒の国出身すごい(爆)ヘンリー王子の「3人捧げたら(殺したら)自由に結婚出来るんだ!」って説得能力の無さよ(苦笑)これ対象年齢どこ狙いなんだろう?単純な話だけど、子どもが観るには怖すぎるしグロすぎるから、中学生向けくらい?でも、冒頭の3D感ある空撮の迫力はなかなか。かつて自由に空を飛んでいたドラゴンの目線なのだなと途中で気づいた。映像綺麗で迫力あって、洞窟の暗いシーンが殆どなので劇場向けだと感じました。「タダより高いものは無い」って言葉を痛感するけど、国を立て直す為の戦利品はしっかり連れて帰る有能な姫たちのお話。2024年劇場未公開・NETFLIX公開作品。

「ティアメイカー」

カテリーナ・フェリオリ主演他。児童養護施設で辛い幼少期を共に過ごし、同じ家族の養子となったニカ(カテリーナ・フェリオリ)とリゲル(シモーネ・バルダッセローニ)。辛い孤児院生活を施設で語り継がれる伝説、“涙の職人ティアスミス”の世界に入り込むことで乗り切ってきたニカと問題を抱えたリゲルは最初は反発し合うも、互いのトラウマに触れ、徐々に惹かれ合ってゆくが・・・。イタリアを初めとした26の言語に翻訳され世界中から愛されるヤングアダルト小説を実写化したダーク・ラブロマンス。

5点!!予告編の印象で「トワイライト」シリーズみたいなダークロマンスかなと期待して鑑賞したらドンピシャ。心を壊された少年少女が愛を取り返すまでの物語で、王道の学園ラブに加えて孤児院の闇、集団訴訟なども入り込んでくる、これまでにないタイプのティーンズムービーでした。主演の二人の美男美女ぶりが突出していて、彼らの美貌と独特の雰囲気が作品の世界観を高めるのをかなり助けています。カテリーナ・フェリオリ可愛いなーエル・ファニングが出てきた時くらいの衝撃。ただ、明らかに映画の2時間では描ききれない物語で、ドラマ化の方が向いていると思います。登場人物たちの関係性、それぞれの傷、その後の展開を描ききれておらず、こちらが深読みしてあげるしかなくなってしまっているのが勿体ない。なので、シーンが変わっていきなり問題が解決していたり、仲良くなっていたり、原作を断片的に表面だけ掬っているだけという印象を受けてしまいます。でも、だからといってダラダラ描かずに潔く105分で切り上げたのは賢明だったかな。「心が傷ついた」ではなく「壊された」と断言するなら、もう少し心の痛みや傷を見せてくれた方がよりダークに共感しやすくなったのでは?と感じました。誰か別の監督でリメイクしてくれないかな~素材が良いだけに勿体ないし消化不良だ・・・。2024年劇場未公開・NETFLIX公開作品。

「脅威の中国漢方」

自然の恵みに人の手が加わって生み出される脅威の漢方。漢方医たちが何世代にもわたって研究を続け、その英知を受け継いできたのです。神話や信仰にもつながる漢方の世界をいま、解き明かすアジアンドキュメンタリーシリーズ。

3点!!私は幼少期から親の影響で漢方が身近にあって摂取もしていたので、西洋医学の薬より漢方の方が効くことも多いです。なので、気になって短編4つ一気見してみたのですが・・・そもそも中医学(中国漢方)と日本の漢方ってアプローチの仕方が違う・・・ということは、配合の仕方もかなり違っていて、自分にフィードバック出来ないんじゃ・・・(汗)でも生薬自体の効能は同じで出てきた半分くらいは飲んだことがあるものでした(それがめっちゃ不健康ってこと(爆))。伝統の製法ばかりクローズアップされていたので、現代の中国漢方、機械化した現場を観て日本のものとどう違うのかヒントを得たかったです。パンデミックで元々トラブルを抱えていた製薬会社各社が致命傷を負い、色々な薬が在庫切れとなる中、漢方も例外ではなく、自分の処方薬を集めるのに相当苦労したので、原料も乱獲されて絶滅してしまったり、中国の都市化で漢方作れる土地や草木がことごとく潰されてしまったり、自分たちを治す切り札を自ら封じてしまっている怖さが身に染みました(>_<)本当にね、今飲んでる漢方なくなったら臓器ボロボロになる西洋医学の薬を大量投入する、それでも治ることはない地獄行き確定なので。あと、原料自体が高額だから、農業分野でも美味しいビジネスなのかと思いきや、どの農家も貧困層な感じで、中国の経済システム報われないと思いました。とりま、勉強にはなった。2024年劇場未公開。

「シティハンター」

鈴木亮平主演他。東京・新宿を舞台に、裏社会の様々なトラブル解決を請け負うスイーパー、冴羽リョウ(鈴木亮平)。通称“シティーハンター”。美女に目がなく、何かというと「もっこり」と叫ぶような男だが、スイーパーとしての腕前は超一流だ。ある日、人間を凶暴化させる麻薬“エンジェルダスト”をめぐる争いによって相棒・槇村秀幸(安藤政信)を失ったリョウ。その日から槇村の妹・香(森田望智)に兄の死の真相を調べて欲しいと付け回されるが・・・。伝説のガンアクションアニメの実写化の日本版が満を持して登場。

5点!!キャラクターの再現度、原作との違いばかりがクローズアップされていて、内容に関する記事があまりなかったのでどうなんだろう?と思い、観てみました。原作はあまり観たことがなかったけど、アニメを流し見してることはあった程度(30分見きったことはない)。鈴木亮平と安藤政信のコンビいいなぁ。女性が欲しい要素兼ね備えてる。アニメでも思ったことありましたが、冴羽リョウというキャラクターは強くて筋肉美でエロくて、モテ要素全部持ってて最高なんですよね。でもグイグイいきすぎるから色気には欠ける・・・。森田望智が二階堂ふみとか天才並みの演技力を兼ね備えていたら、本作ももう少しエモーショナルなものになったような気がして少し残念でした。再現度は言うまでもなく完璧でしたよね(笑)もう鈴木亮平にオファーした時点でそこは心配なしっていう。ストーリーは長い原作の最初のエピソードなので、序章のわりには上手く盛り上げていた気がします。少なくとも海外の色々な「シティハンター」よりは良かったです。2024年劇場未公開・NETFLIX公開作品。

「52ヘルツのクジラたち」

杉咲花主演他。その声は、あなたに届く。傷を抱え、東京から浜辺の街の一軒家へと移り住んできた貴湖(杉咲花)は、虐待され、声を出せなくなった「ムシ」と呼ばれる少年(桑名桃李)と出会う。かつて自分も、家族に虐待され、搾取されてきた彼女は、少年を見過ごすことが出来ず、一緒に暮らし始める。やがて、夢も未来もなかった少年に、たった一つの“願い”が芽生える。その願いをかなえることを決心した貴湖は、自身の声なきSOSを聴き救い出してくれた、今はもう会えない安吾(志尊淳)とのかけがえのない日々に思いを馳せ、あの時、聴けなかった声を聴くために、もう一度、立ち上がる―。本屋大賞受賞、町田そのこによる魂が涙する傑作小説、待望の映画化。

6点!!原作未読です。成島監督が安パイに置きにいった感じ。重すぎず軽すぎず。生きてたら助けて欲しくても「助けて」って声に出せないことっていっぱいある。虐待もそうだけど、他の事でも大人になっても、親友がいても「助けて」って言えなくて、心の中で「誰か助けて」って思うことがいっぱい。その先にあるのが自死なのだと思う。声にならないSOSはわかることもある。でもそこで咄嗟に、そして長期的に動くってなかなか出来ることではない。色々な偏見と戦うことになるから。世の中は善良で必死に生きている人ほど、傷つけられるように出来ていると感じることも多い。だって守ってもらえるはずの法律は強者が作ったものだから、この国のルールに従って生きようとすると追い詰められていくばかりで、本当にそういう人同士の声なきSOSが繋がって助け合って生きられたら、どれだけ救いになることだろう。原作の方が丁寧に描かれている感じがするので読んでみようかな。2024年公開。

「哀れなるものたち」

エマ・ストーン主演他。自ら命を絶った不幸な若き女性ベラ(エマ・ストーン)は、天才外科医ゴッドウィン(ウィレム・デフォー)の手によって、奇跡的に蘇生する。ゴッドウィンの庇護のもと日に日に回復するベラだったが、「世界を自分の目で見たい」という強い欲望に駆られ、放浪者の弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)の誘惑で、ヨーロッパ横断の旅に出る。急速に、貪欲に世界を吸収していくベラは、やがて時代の偏見から解き放たれ、自分の力で真の自由と平等を見つけていく。そんな中、ある報せを受け取ったベラは帰郷を決意するのだが―。天才監督ヨルゴス・ランティモスとエマ・ストーンが誘う映画史上最も大胆で、空前絶後の“冒険”。第80回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞、第96回アカデミー賞11部門ノミネート4部門受賞作。

6点!!ランティモスはいつも人間が愚かさに翻弄される姿をシニカルな笑いをもって描くが、今作は少し様相が違っている。ベラ以外の登場人物全員が、自身の凝り固まった考えやしがらみに囚われているからこそ、真っ新に生まれ変わり汚れることなく成長していくベラに強烈に惹かれ、自分のしがらみの世界に彼女を閉じ込めようと躍起になっている。いつものシニカルな笑いは控えめで、割と真面目に(ランティモスにしては)“女性の自由への解放”を描こうとしていると感じた。マーク・ラファロが剥き出しの嫉妬でどんどん破滅していく感じとラストの光景はやっぱりランティモスで笑えたけど。いつものニヤニヤ笑いながら観る感じを想像していると、違うので戸惑う。意外と真面目に、人間社会を維持するあらゆるものに人々は囚われ、何を捨てられないか、ベラのように捨てられたなら、性の本能を貪る動物のようになってしまうのか、それともそれでも人間は学び、理知的に進化することが可能なのか、どんどん議題を突き付けられていく感じ。ちょっと疲れちゃうのでシニカルな笑いプリーズ。あとイギリスや欧米と日本では“無垢”の描き方が全然違うなぁとも感じた。ここまでプッシュアップして小難しい仕上がりにするとアカデミーが振り向くのか(これまでのシニカルな方が好き)2024年公開。

「コンクリート・ユートピア」


イ・ビョンホン主演他。大災害により一瞬で廃墟と化したソウル。唯一崩落しなかったマンションで住民代表となったヨンタク(イ・ビョンホン)。職業不明で冴えないその男は、権力者に君臨したことで次第に狂気を露わにする。そんなヨンタクに傾倒していくミンソン(パク・ソジュン)と不信感を抱くミョンファ(パク・ボヨン)。極限の状況下でヨンタクの支配が頂点に達したとき、思いもよらない争いが勃発する。そこで明らかになった、その男の本性。果たして男の正体とは―。ラストに待ち受けるのは光か、闇か。世界が震撼した衝撃のパニックスリラー、日本上陸。

4点!!イ・ビョンホンもパク・ソジュンも最初から顔面崩壊。韓国の俳優さんって本人だと言われてもわからないくらい表情も雰囲気も気迫で変えてしまうところが凄い。しかも、若手の俳優でもそれが出来ちゃう人が多いのがまた凄い。人は限られた場所、資源の中に閉じ込められるとここまで排他的になってしまうものなのだろうか。戦争がそうなのだからそうなのだろう・・・。そして、排他的環境は必ず更なる不満や犠牲を生み、もっと狭まったものへと縮まっていく。韓国は本作をアカデミー賞韓国代表作にしてたけど、これで良い評判取れたの?映画というよりはドラマ的で結構ダラダラ同じ件りが続いてたけど。もう一人、映画班の俳優がいたら少しは締まったかも知れないけど、ドラマ俳優で固め過ぎたのが敗因かも。同じ状況でも国によって流れは変わってくると思うので、日本も含め他の国パターンも観たいかも。これをアカデミー代表にしたってことは、本作が結構韓国のリアルであながちやりすぎでもないんだなと国民性がわかりやすく出ている作品だと感じました。2024年公開。

「ファミリー・アフェア」

ジョーイ・キング主演他。ピュリツァ―賞作家の母親(ニコール・キッドマン)が、自分の上司の映画スター(ザック・エフロン)と恋に落ちてしまった!?二人の性格を知り尽くした娘ザラ(ジョーイ・キング)は何とか二人の恋愛を阻止しようとするが、一度火のついたセカンド・ラブの勢いは止まらず・・・!?「P.S.アイラヴユー」「ラスト5イヤーズ」のリチャード・ラグラベネーズと豪華キャストでおくる、すべての人とその母に捧ぐ愛の物語。

5点!!恋愛は自由だし失礼だけど、21歳差のカップル(劇中では16歳差設定)は無理があるわ~と思っていたけれど、動いているニコールは静止画と違って美しく、これならアリだわと思った。というかニコールがラブストーリーしかもコメディをやること自体、久々だし超レアで恋するニコールを観たことなかったゆえの思い過ごしだった。黒縁メガネのアヒル口で恋するニコールはブリジット・ジョーンズのようで超キュート♪年齢関係なく、恋する女性はいつでも可愛いのだとあらためて気づかされた。何も考えずに観られるハッピーラブコメで、特に際立つところがあるわけではないが、3人それぞれの成長を丁寧に描いており、演者もしっかりしているので、最後までちゃんと観れちゃう。ザックとニコールのシーンは恋の始まりのドキドキとロマンティックさがあり、ザックとジョーイ・キングのシーンは遠慮のないジョークややりとりがテンポよく繰り出され、心地良い。元気とハッピーが足りない時にオススメな作品です。2024年劇場未公開・NETFLIX公開作品。

「梟 フクロウ」

リュ・ジョンヨル主演他。あなたはこの闇に何を見るのか。盲目の天才鍼師ギョンス(リュ・ジョンヨル)は、病の弟を救うため、誰にも言えない秘密を抱えながら宮廷で働いている。しかし、ある夜、王の子の死を“目撃”し、恐ろしくも悍ましい真実に直面する。見えない男は、常闇に何を見たのか?追われる身となったギョンスは、制御不可能な狂気が迫る中、昼夜に隠された謎を暴くために闇夜を駆ける―絶望までのタイムリミットな、朝日が昇るまで。ある闇夜に起きた怪奇な事件。唯一の目撃者は盲目の男―韓国年間最長No.1記録を樹立、国内映画賞で18冠に輝いた、史実に残された最大の謎に迫る<全感覚麻痺>サスペンス・スリラー。

9点!!ギョンスが王権争いに巻き込まれるまではテンポ悪かったけれど、巻き込まれてからはハラハラドキドキの連続。逃げても逃げても追いつかれる袋小路みたいな。韓国や中国は王族の謎の死が多く、史実に奇想天外なストーリーを加えるのがとても上手いけれど、日本も毒殺とか相次いでいたのに、そういうのが作られないのはどうしてだろう?タブー?それとも既存のイメージに囚われていて、本作みたいに大胆な脚色を加えられない?一度は見ざる聞かざる言わざるでいこうとしたギョンスが世子とその息子の為に、正しさから背を向けないことを決め走り出し、最後の最後で一矢報いる展開は胸アツでした。2023年の本国映画賞を総なめしたのも納得の面白さです♪2024年公開。

 

 

「ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人」

マイウェン主演他。貧しい家庭の私生児として生まれ、娼婦同然の生活を送っていたジャンヌ(マイウェン)は、類まれな美貌と知性で貴族の男たちを虜にし、社交界の階段を駆け上がっていく。ついにヴェルサイユ宮殿に足を踏み入れたジャンヌは、時の国王ルイ15世(ジョニー・デップ)と対面を果たす。二人は瞬く間に恋に落ち、彼女は生きる活力を失っていた国王の希望の光となっていく。そして、国王の公式の愛人、公妾となったジャンヌ。しかし、労働階級の庶民が国王の愛人になるのはヴェルサイユ史上、前代未聞のタブー。さらに堅苦しいマナーやルールを平気で無視するジャンヌは、保守的な貴族たちから反感を買う一方で、宮廷に新しい風を吹き込んでいく。しかし、王太子妃のマリー・アントワネットが嫁いできたことで立場は弱まり、やがて運命は大きく変わっていく・・・。10世紀フランス最大のスキャンダル。タブーを破り、ヴェルサイユの頂点へ。マリー・アントワネットの宿敵“デュ・バリー夫人”の愛と波乱の<実話>。

3点!!デュ・バリー夫人側から見たフランス史と言う感じ。すでに知っているエピソードしかなく、それも教科書のように面白みも脚色もなく古典的に描かれています。主テーマがルイ15世との愛にあてられているので、アントワネットとのバッチバッチな戦いや和解、そして、処刑までも観たかったのに全く描かれていません。これじゃない感があってモヤモヤ。愛に泣き崩れながら宮廷を去るデュ・バリー夫人じゃなくて最後まで生き延びようと足掻くデュ・バリー夫人が観たいんだよ~(>_<)あと、ルイ16世が下手するとパパより背高くて違和感が凄い。簡単にクリア出来るところはちゃんと歴史を再現して欲しかったです。2024年公開。

「ゴールデンカムイ」

山崎賢人主演他。猛き者達よ、奪い合え。二〇三高地での鬼神のごとき戦いぶりに「不死身の杉元」と異名を付けられた日露戦争の英雄・杉元佐一(山崎賢人)は、ある目的のために北海道で砂金採りに明け暮れていた。そこで杉元は、アイヌ民族から強奪された莫大な金塊の存在を知る。金塊を奪った男「のっぺら坊」は、捕まる寸前に金塊をとある場所に隠し、網走監獄に収監後、そのありかを示した刺青を24人の囚人の身体に彫り、彼らを脱獄させた。刺青は24人全員で一つの暗号になるという。そんな折、ヒグマの襲撃を受けた杉元を、アイヌの少女・アシリパ(山田杏奈)が救う。アシリパは金塊を奪った男に父親(井浦新)を殺されていた。そして父の仇を討つため、杉元と行動を共にすることに。同じく金塊を狙うのは、日露戦争で命を懸けて戦いながらも報われなかった師団員のために北海道制服を目論む大日本帝国陸軍第七師団の鶴見中尉(玉木宏)。そして、もう一人、戊辰戦争で戦死したはずの新選組「鬼の副長」こと土方歳三(舘ひろし)が自らの野望実現のため金塊を追い求めていた―。気高き北の大地・北海道に隠された、莫大なアイヌの埋蔵金。謎を解くカギは24人の脱獄囚に彫られた刺青。今、アイヌの埋蔵金を巡る、三つ巴のサバイバル・バトル、開幕!!

3点!!原作未読で山田杏奈ちゃん目当てで鑑賞。ゴリゴリの男臭いストーリーかと思い敬遠していましたが、結構コメディータッチな部分も多く、テンポが良くて観やすかったです。でもあまりに都市伝説な話に大の大人の男たちが皆食いついているのは、やはりアニメの世界観過ぎて、実写では入り込めないとキツイと感じました。しかも、この規模の撮影を続けて続きはWOWOWって本当にやめてほしい~。そんなことしても入らない人は入らないで諦めるだけだって~(>_<)あと全員にダダーンと名前表記が入るから誰が重要人物で誰がそうでもないのかわからない・・・。ごちゃごちゃしてるから登場人物、整理した方が良い気がする・・・。山崎賢人さんのアクションがキングダムとどう違うのかわからないくらい似ているけど、同じ少年漫画原作でもキングダムの方がワクワクできる。本作は男だけの三つ巴~となるとどうしても勝手にやってください感が女性目線では出てしまう。はなから女性はターゲットにしていないのかな?(^^;) 2024年公開。

「ワンダーランド あなたに逢いたくて」

タン・ウェイ、ペ・スジ、パク・ボゴム主演他。死んでしまった人や昏睡状態になってしまった人など、もう話すこともできない愛する人を人工知能をつかって再現し、対話することができる画期的なサービス「ワンダーランド」。幼い娘に自身の死を知らせず、ワンダーランドにサービスを依頼するバイリー(タン・ウェイ)。事故で昏睡状態となった恋人のテジュ(パク・ボゴム)を宇宙飛行士に復元し、地球と宇宙との仮想恋愛を行う幸せな日々を過ごすジョンイン(ぺ・スジ)。AIの両親に育てられ、顧客をサポートする主席プログラマーのヘリ(チョン・ユミ)と、彼女の部下で新人プランナーのヒョンス(チェ・ウシク)。ある日、奇跡的に昏睡状態から目を覚ましたテジュは、自身のAIの存在に混乱する。一方、バイリーはサービスの終了によりエラーを起こし始める。愛を“きっと”蘇らせることができるサービスを取り巻く人々の愛と希望、そして悲しみを優しく紡いでいく人間ドラマ。

5点!!韓国ドラマ班総動員の豪華キャストで公開前から話題になっていた本作。なんか、テーマの割に深堀りしておらず、それぞれのエピソードも描き方が浅いので、全体的にふわっとしてる普通の近未来ファンタジーに仕上がってしまった感じ。韓国お得意の見ごたえや衝撃のどんでん返しがないから、拍子抜けする人が多そう。コン・ユがメンテナンスAI役で出てた。本作を観て、こういう人の死に関わるサービスはすべて別れを受け入れる為の準備に繋がっていく気がした。突然の別れじゃなくても、人の人生は短く後悔がないなんてことはないから、やり残した後悔の回収や「もう大丈夫」と前に進む為にあるサービスなのだろう。人の精神的強さはそれぞれ違うから「もう大丈夫」な時期はすぐかも知れないし、一生こないかも知れない。けど、虚構の中にリアルを感じた時、人は愛は今も目の前に確かに存在していることを知るのだと思う。とはいえ、ジョンインとテジュカップルみたいな状況は難しく、好きな人が二人に分かれたら、自分の愛も二つに分かれてしまう気がした。そして、そこから二つの愛の物語がスタートしてしまうのは必然。それは虚構ではなくリアルだ。だからこそ、テジュは偽物と人生を進めてしまったジョンインにショックを受けたし、ジョンインはワンダーランドのテジュの気持ちを慮り、別れがたく感じた。人間だろうとAIだろうと、大切な人と気持ちを交わすというのはそういうことだと思う。エピソードが少ないのだし、その辺りをもっとガッシリ描けていたら、しっかりした人間ドラマになっていたと思うので、残念。こういうサービスがあったら使うか?と問われたら、高額でなければ、私はお墓参りとかと同じような感覚(大切な人に話をしに行く前提)で使うと思う。そして、気持ちの整理がついて前進できるようになったら手放すと思う。アプリやスマホゲームの進化系って感じかな?2024年劇場未公開・NETFLIX公開作品。

「落下の解剖学」


ザンドラ・ヒュラー主演他。これは事故か、自殺か、殺人か―。人里離れた雪山の山荘で、男が転落死した。はじめは事故と思われたが、次第にベストセラー作家である妻サンドラ(ザンドラ・ヒュラー)に殺人容疑が向けられる。現場に居合わせたのは、視覚障がいのある11歳の息子(ミロ・マシャド・グラネール)だけ。承認や検事により、夫婦の秘密や嘘が暴露され、登場人物の数だけ<真実>が現れるが―。事件の真相を追っていくうちに、観る者は想像もしなかった人間の深淵に、登場人物たちと共に<落ちて>いく。そして最後に突き付けられるのは、あなた自身を映し出す鏡―今、現代を抉る新たな傑作が誕生した。第96回アカデミー賞脚本賞受賞、第76回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作。

9点!!正直、物語が佳境に入るまで寝落ちしたけど(爆)、全体を通して観たら見事な人間描写で、私にとってタイムリー過ぎて心が抉られ再起不能に陥った(涙)人と人が争うこと自体、膨大なエネルギーを要し醜いものなのに、裁判、法廷と言う場は何が真実かを追求する場ではなく、嘘を言い、その嘘を暴き、互いをもっと貶め傷つけ合うだけの場だ。サンドラの言うように、負けたら最悪だけど、裁判に勝ってもそれは“ただ終わっただけ”で何も得られない。“just over”。夫婦とはそもそも個人的なものなのだから、公の場で、全てを明らかにする必要がない。傍から見たらAという事実でも、実際二人の間で交わされた感情はBでもあるしCでもあるかも知れない。それを第三者がどうこう言う権利もないはずだ。私は誰も傷つけたくないし、傷つけられたくない。大切な人を巻き込んで無意味に傷つけたくない。今、悲鳴のようにそう心がそう叫んでいる。本当の意味での真実は、裁判では絶対に得られない。真実は観る角度、人によって違う色だから。なのに、何故わざわざ自分と相手をさらに貶める場に引っ張り出すのだろうか?私は人間のこのどす黒い感情や世界に対応出来るほど、黒くなれない。すごく苦しくて、息が詰まり、どん底に突き落とされる余韻が半端ない作品だった。2024年公開。

「コール・ジェーン 女性たちの秘密の電話」

エリザベス・バンクス主演他。私の身体か、胎児の命か、自由に選択できないわたしたち。1958年、アメリカのシカゴ。裕福な家の主婦として生きるジョイ(エリザベス・バンクス)は何不自由ない暮らしを送っていたが、2人目の子供の妊娠によって心臓の病気が悪化してしまう。唯一の治療は、妊娠をやめることだと担当医に言われ中絶を申し出るが、中絶が法律的に許されていない時代。地元の病院の責任者である男性全員から「中絶は反対だ」と、あっさり拒否されてしまう。そんな中、街で偶然「妊娠?助けが必要?ジェーンに電話を」という張り紙を見つけ、違法だが安全な中絶手術を提供するアンダーグラウンドな団体「ジェーン」にたどり着く。その後、ジョイは「ジェーン」の一員となり、自分と同じ立場で中絶が必要な女性たちを救うために立ち上がる!名もなきヒロインたちが「女性の権利」のために立ち上がった、感動の実話。

7点!!ポスターを観てリース・ウィザースプーン主演だと勘違いしていた。だってエリザベス・バンクスでは妊娠する役にしては高齢過ぎる。心臓病を患う以前に超高齢出産の危険もある設定になっちゃう(超ミニスカート履いてるから恐らく違う)。実話なのに・・・。法律において、問題を抱えている当の本人が蚊帳の外になり、決定権は基礎情報も持たない無知な法を振りかざす者にしか与えられないのはいつの時代も変わらない。今だってそうだ。何も変わっていない。その痛みを経験することが一生出来ない、知らない人間が一個人の人生や命の選択を采配するのはおかしい。医療的措置としての中絶も認められない日常に生きるなんてある意味、戦争と同等レベルで恐ろしいことだと思う。でも「ジェーン」で医師免許を持たない者が処置するのは恐ろしいことで(バージニア(シガニー・ウィーバー)の言うように殺人になってしまう)、「発足から解散まで一人も死者が出なかったのが誇りだ」とアメリカらしい考え方でまとめているが、ただの偶然で結果論だ。法律もやったもん勝ちシステムなところがあるから、対抗する側も同じ対応をしないと助けられなかったかも知れないが、これは誇って良いことではない気がする。男性と女性が平等になる日なんて一生来ない気がする。そうなると私は女性で幾度も被害に遭ってきた立場なので、これまで男性はやりたい放題やってきたのだから男女差が逆転すれば良いのにと思ってしまった。そうすれば世界の幾つかの災厄はなくなるかも知れないとさえ思う。もう女性が自分の娘に起きたことでさえも「仕方がない」と涙をのむ世界線はうんざりだし、クレイジーなこの世界でクレイジーにならずに生きるのはとても困難である。2024年公開。

「青春18×2 君へと続く道」

シュー・グァンハン、清原果耶主演他。あの時、想いを伝えていたら、未来は変わっていただろうか。18年前の台湾。カラオケ店でバイトする高校生・ジミー(シュー・グァンハン)は、日本から来たバックパッカー・アミ(清原果耶)と出会う。天真爛漫な彼女と過ごすうち、淡い初恋を抱いていくジミー。しかし、突然アミが帰国することに。意気消沈するジミーに、アミはある約束を提案する―。時が経ち、現在。人生につまづき台南の故郷に戻ってジミーは、かつてアミから届いた絵ハガキを手に取る。初恋の記憶がよみがえり、あの日の約束を果たそうと彼女が生まれ育った日本へ・・・。東京から鎌倉・長野・新潟・そしてアミの故郷・福島へと向かう。列車に揺られ、一期一会の出逢いを繰り返しながら、ジミーはアミとのひと夏の日々に想いを馳せる。旅の先で、ジミーが知った18年前のアミの本当の想いとは―。「余命10年」藤井道人監督最新作―日本と台湾を舞台に、18年の時を経て繋がる“初恋の記憶”。

7点!!藤井道人監督は良くも悪くも、作品のどこかしらが万人の心に触れるエンタメ映画を作る監督だと思う。道枝駿佑やミスチルの起用なんかでヒットさせる気満々なのが伝わってきちゃうのがちょっと勿体ないけど(^^;) 本作も作品自体はありふれたものだけれど、ノスタルジックな台湾の空気や香り、古い手紙の香水、名作のオマージュ、そのひとつひとつが本当に綺麗にまとまっていて、嫌味なく心に溶けていく感じ。こういうストレートな大衆映画に心を持っていかれるのは悔しいけど(笑)、自分にとって忘れられない恋を思い起こす作品で、気づいたら嗚咽してボロボロ泣いていました(^^;)清原果那ちゃんの表情もいつもと違う観たことのない可愛さでした。シュー・グァンハンは台湾のコン・ユって感じで雰囲気のある俳優さん(ちょっと昔のユ・アインぽくもある)。忘れられない恋って、それを一生の糧にしたまま、次の恋やその人がいない人生を進んでいいのかな?両手に持つことになっちゃうけど、それでもいいのかな?“大切”は死ぬまで“大切”でいいのかな?いつかまた道が交わる時が来ると思っていいのかな?本当に忘れられない恋の欠片がどんどん溢れてきて切ない。普通に良い映画で台湾では爆ヒットしそうだけど、日本ではどうなんだろう?ミニシアターでこじんまり感動したい作品ではある(そうはならないのが藤井道人監督作(笑))2024年公開。

「チャレンジャーズ」

ゼンデイヤ主演他。私が主役。私がルール。人気と実力を兼ね備えたタシ・ダンカン(ゼンデイヤ)は、絶対的な存在としてテニス界で大きな注目を集めていた。しかし、試合中の大怪我で、突如、選手生命が断たれてしまう―。選手としての未来を失ってしまったタシだったが、新たな生きがいを見出す。それは、彼女に惹かれ、虜となった親友同士の2人の男子テニスプレーヤーを愛すること。だが、その“愛”は、10年以上の長きに渡る彼女にとっての新たな<ゲーム>だった。はたして、彼女がたどり着く結末とは―。あなたの“価値観”を揺さぶる衝撃の<0(ラブ)ゲーム>開幕!「君の名前で僕を呼んで」「ボーンズ アンド オール」のルカ・グァダニーノ監督最新作。


5点!!ルカ・グァダニーノ×ゼンデイヤが気になったので鑑賞。私はテニスはやらないけど、テニス×恋愛の映画がたくさんあるってことはテニスは恋愛と似てるのかな?タシにとって二人との恋愛がゲームだったわけではなく、愛する人と夢を同時に失い彷徨った末に、テニスで情熱を取り戻したい気持ちと復讐心と妥協してしまった故の現在にもがき流され、ここまできたように感じた。もっとどんでん返しありのタシの完璧なラブゲームが展開されるのかと思ったので正直、拍子抜け。わりとスポ根寄りの展開で、ラストなんかもう爽やか一択!悩みとかモヤモヤはスポーツで跳ね飛ばせ的な考え方があるけど、まさにそんな感じ。試合シーンは撮り方で何とかしようとしているのはわかるけれど、息詰まる攻防戦や迫力はなかったです。しかし、ゼンデイヤはどの時代のファッションも完璧に着こなすな~大学生のゼンデイヤがバービー人形みたいに可愛い。最初からタシとパトリック(ジョシュ・オコナー)は誰も入り込む余地などないぴったりカップルだったのに、アート(マイク・ファイスト)はそれに気付かなかったのだろうか?それとも互いに見ないふりをした?自分を守る為の嘘って自分にも返ってくるし周囲も傷つけるから残酷・・・。ルカ作品の多様性はわかったけど、どれも“衝動”や“駆け引き”はテーマとしてある気がする。そろそろ「君の名前で~」の続編作ってくれないかな~シャラメがおじさんになっちゃうよ~(>_<)2024年公開。

「ミッシング」

石原さとみ主演他。失くしたのは、心でした。とある街で起きた幼女の失踪事件。あらゆる手を尽くすも、見つからないまま3ヶ月が過ぎていた。娘・美羽の帰りを待ち続けるも少しずつ世間の関心が薄れていくことに焦る母・沙織里(石原さとみ)は、夫・豊(青木崇高)との温度差から、夫婦喧嘩が絶えない。唯一取材を続けてくれる地元テレビ局の記者・砂田(中村倫也)を頼る日々だった。そんな中、娘の失踪時に沙織里が推しのライブに足を運んでいたことが知られると、ネット上で“育児放棄の母”と大バッシングが起きてしまう。世の中に溢れる欺瞞や好奇の目に晒され続けたことで沙織里の言動は次第に過剰になり、メディアに煽られ、心を失くしていく。一方、砂田には局上層部から、沙織里や沙織里の弟(森優作)に対する世間の関心を煽るような取材の指示が下る。それでも沙織里は「ただただ、娘に会いたい」という一心で、世の中にすがり続ける。その先にある、光に―。常に観客に衝撃を与え想像力を刺激し続ける吉田恵輔監督最新作。必ずゆれる。心が揺れる。愛する娘が失踪した―。これは壊れた世界の中で、光を見つける<わたしたち>の物語。

4点!!本作では吉田監督が石原さとみを脱皮させられるかに注目が集まっていて、否定的な批評が多い中で鑑賞してみた。私も女優を一皮剥けさせることに長けている吉田監督に期待していた部分はあった。石原サイドの意図もそこにあったように思うが、制作陣が描きたかったのはあらすじにあるようなテーマだったはずで、石原さとみを使うことでテーマがブレてしまった感は否めない。しかし、石原さとみは確かに気負いはあったように思うが、壊れてしまった母親を再現できていたし、メディアに取り上げられない彼らの本当の姿を描けていたように感じた。ただ、全てを曖昧に描き過ぎていて、どれもぼやけてしまい、着地すら出来ずに終わっているので、消化不良感が半端ない。このテーマで観客にボールを投げてゆだねるならもっと強烈なボールでないと駄目だと思う。「空白」もそうだったが、吉田監督は恋愛抜きの事件系テーマを扱うのは、向いていないのではないかと感じた。同じ事件系でも「ヒメアノ~ル」「神は見返りを求める」などはきっちり抉ってくれて最高だったので。あと沙織里の言動を観ていて、なりふり構わないのと身勝手、我儘なのとは違うと感じた。それに対する周囲の人々の苦悩ももう少し濃く描けていれば良かったように思う。とにかくモヤッと映画なことは確かなので、人に勧めにくい作品ではある。2024年公開。

「あんのこと」

河合優実主演他。彼女は、きっと、あなたのそばにいた。21歳の主人公・杏(河合優実)は、幼い頃から母親(河井青葉)に暴力を振るわれ、十代半ばから売春を強いられて、過酷な人生を送ってきた。ある日、覚醒剤使用容疑で取り調べを受けた彼女は、多々羅(佐藤二朗)という変わった刑事と出会う。大人を信用したことのない杏だが、なんの見返りも求めず就職を支援し、ありのままを受け入れてくれる多々羅に、次第に心を開いていく。週刊誌記者の桐野(稲垣吾郎)は「多々羅が薬物更生者の自助グループを私物化し、参加者の女性に関係を強いている」というリークを得て、慎重に取材を進めていた。ちょうどその頃、新型コロナウイルスが出現。杏がやっと手にした居場所や人とのつながりは、あっという間に失われてしまう。行く手を閉ざされ、孤立して苦しむ杏。そんなある朝、身を寄せていたシェルターの隣人から思いがけない頼みごとをされる―。入江悠監督が描く透徹したまなざしから浮かぶこの社会の歪み、生の美しさ。「少女の壮絶な人生をつづった新聞記事」を基に描く、衝撃の人間ドラマ。

9点!!ズドーンと重たく落ち込みます。皆が目を逸らし続けている、救済ネットの隙間に落ちてしまった子の末路だから。人は誰でも生きる為には人との繋がりが必要で、それが少しで良い人も多く必要な人もいる。状況もある。コロナ禍がそれを分断してしまったのは確かで、杏のようにコロナ以前から誰かに助けを求めるということが出来ない子はコロナ禍を生き抜くのは容易ではない。弱く歪な人々が支え合って何とか生きている世の中では、些細なことの積み重ねが大事で、それがまた命取りにもなる。杏が自立型シェルターにいなければ何とかなったのだろうか?ボロボロの身体で子どもみたいな無垢な表情をして、何とか希望の一筋に手を伸ばそうとした杏の心を想うと胸が張り裂けそうになる。支援ネットは二重三重と何重あっても足りるということはないのだから、出来るだけ多く選択肢を持ってしかるべきだと感じた。これしかないと間口が狭すぎるから、皆、助けを求める以前に諦めてしまうのだ。日本中のどこに「助けて」と言っても全部助けてくれないってことなんていっぱいあるしね。その度に感じる「(助かるのに)死ねってことかな」という絶望を、彼女たちは普通の人の何倍も何度も経験してきたのだろう。韓国みたいにこういう作品が世に出て注目されても、それで法律が変わったり世論が動き出すということもない。すべては個から始まるけれど、個が出来ることには必ず限界がある。この国に希望なんて未来なんてあるのだろうかと「明日は我が身」的な苦しさを感じる作品です。2024年公開。

「武道実務官」


キム・ウビン主演他。武道とeスポーツが好きで「楽しいことだけをしたい」が信条の青年イ・ジョンド(キム・ウビン)は、偶然、電子足輪を付けられた犯罪者に攻撃を受けた武道実務官を助けたことで、スカウトされ、武道実務官として働くことになる。保護観察官のキム・ソンミン(キム・ソンギュン)とバディを組み、規則を守らない電子足輪をつけた前科者を追い、再犯を未然に防ぐために奔走する日々の中で、ジョンドは楽しいだけでない、実務官としてのやりがいを見出していく。そんな中、悪名高い小児性犯罪者が釈放されたことで、彼をマークしていた二人は逆に罠に嵌められ大怪我を負ってしまう。果たして、ジョンドたちは犯罪者たちの策略を止めることが出来るのか―?「ミッドナイト・ランナー」「デュヴァイン・フューリー」のキム・ジュファン監督最新作。青年の成長とバディの絆を描いたアクションエンターテインメント。

8点!!「ミッドナイト・ランナー」の監督作とは思えないほど、面白かった!全然期待してなかったから(失礼)楽しめたというのもあるけど、作品としてのバランスが優れていました。キム・ウビンの映画本格復帰作(「宇宙+人」は日本未公開だから)で、彼が本格アクションで完全復活した感じも嬉しいし、キム・ソンギュンとのバディも安心感しかなく、脇役も含めそれぞれの俳優陣の魅力がちゃんと伝わる作品。笑いとアクション、緊迫感のバランスも絶妙だった(キム・ソンギュンの骨固定する器具つけてる姿が面白いのは何故だろう(爆))。人間ドラマとしてもジョンドの成長とソンミンとのバディも見事なケミストリー(^^) 中間バトルでボコボコにやられてたのに、クライマックスで勝てちゃう展開は多少ご都合主義かなと感じたが、それでも力が拮抗しているラインで描けていたからそこまで違和感にならなかったし、犯罪者たちの悪質性もしっかり伝わる内容になっているので、メディアから世論が動きやすい韓国なら、性犯罪者の刑の軽さについて、また議論になるのではないかと感じた。本当に「ミッドナイト~」から今までにキム・ジュファン監督に何があったの?ってくらい急成長しているΣ(゚д゚;) キム・ウビンのヤンチャなニヤリは相変わらず魅力的だし、これはネトフリ世界ランク1位獲ったのも納得かも☆ 2024年劇場未公開・NETFLIX公開作品。


「プリシラ」

ケイリー・スピーニー主演他。恋と孤独で着飾っていた。14歳のプリシラ(ケイリー・スピーニー)は、世界が憧れるスーパースター、エルヴィス・プレスリー(ジェイコブ・エロルディ)と出会い、恋に落ちる。彼の特別になるという夢のような現実・・・。やがて彼女は両親の反対を押し切って、大邸宅で一緒に暮らし始める。魅惑的な別世界に足を踏み入れたプリシラにとって、彼の色に染まり、そばにいることが彼女のすべてだったが・・・。世界が憧れるスーパースターと恋に落ちた14歳のプリシラ。シャネルとヴァレンティノが彩る、60~70年代カルチャー。全世代の女子の共感を生む、ソフィア・コッポラ最新作。第80回ベネチア国際映画祭最優秀女優賞受賞作。

5点!!最近のソフィア・コッポラ作は、外見だけ煌びやかで美味しそうな箱で中身スカスカみたいな作品が多くて(つまり衣装や世界観に頼り過ぎている)本作もそんなモヤモヤ作です。でも確かにケイリー・スピーニーとジェイコブ・エロルディのキャスティングは当たりで、ケイリーが着るファッションもめちゃめちゃ可愛い。だからこそ、プリシラの境遇と重なって着飾ってどこにも出かけられないお人形の印象を強めている。てか、プリシアの自伝を元にしているらしいけど、ということは不倫で離婚、自ら離れたけど、愛していたのはあなただけよってこと?(謎)知らなかったけど、作中に描かれているエルヴィスは典型的なDV、モラハラ男。14歳から彼色に染められてたら、あの時代、気づけないのかな?エルヴィスが14歳のプリシラにアプローチした理由も病んでるし、プリシラもどんどん生気がなくなっていくし、全体的に病み映画。。。プリシラの初恋ゆえの一途さは天晴れだけど、スーパースターだってアウト言動は一般人と変わらないのよ~(爆)2024年公開。
 

「オッペンハイマー」

キリアン・マーフィ主演他。この男が、世界を変えてしまった。第二次世界大戦下、アメリカで立ち上げられた極秘プロジェクト「マンハッタン計画」。これに参加したJ・ロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィ)は優秀な科学者たちを率いて世界で初となる原子爆弾の開発に成功する。しかし原爆が実践で投下されると、その惨状を聞いたオッペンハイマーは深く苦悩するようになる。連戦、赤狩り―激動の時代の波に、オッペンハイマーはのまれてゆくのだった―。世界の運命を握ったオッペンハイマーの栄光の没落、その生涯とは。今を生きる私たちに、物語は問いかける。一人の天才科学者の創造物には、世界の在り方を変えてしまった。そしてその世界に、私たちは今も生きている。クリストファー・ノーラン監督最新作。第96回アカデミー賞最多7部門受賞、第81回ゴールデングローブ賞最多5部門受賞作。

10点!!凄い映画を観てしまった。そんな武者震いがして、劇場で観ていたら立ち上がれなくなっていただろうと思った。ノーランの作品はやたら長くてわざわざ裏の裏を作るようなものが多いので苦手なのだが、本作もめちゃめちゃ難解で半分以上が聴聞会など裁判のようなシーンが続くのに、まったく眠くならないし、ノーランが意図して作ったであろう没入感が凄まじい。結末はわかっているのに手に汗握りっぱなし、全員が破滅に向かうのを止められない大きな流れにハラハラしっぱなしだった。人間の恐ろしさと愚かさが凝縮されていた。大体、科学者という生き物が全員ピュア過ぎる。「作っても使わない」なんてことを本気で信じているなんて、天才、怖すぎる。その部分においてはプロメテウス論も成程と感じた。キリアン・マーフィとロバート・ダウニー・Jr.の演技合戦も驚異的だ。ノーラン作常連のキリアンだが、こんな名優だとはこれまで知らなかった。脇を固める俳優陣も全員、単独主演を張れる俳優ばかりで「オッペンハイマー」を扱う気合の凄さを感じた。ノーラン作の特徴の“すべてが完璧”を今回も成し遂げていた。でも、時系列が分かりにくいとの台詞量がハンパない(^^;)あとサラッと通り過ぎたけど、オッペンハイマー、一度目の不倫でジーン(フローレンス・ピュー)を死なせているのに、二度目もあったんかいっていうツッコミが普通に出た。何なの、科学者は夢見る少年だからなの?(爆)逆らえない世界の大きな渦って本当にあるのだろうかと考えた。オッペンハイマーだけでマンハッタン計画を成功させたわけではなく、自発的に集まった天才科学者たちの半分が断っていたら、確実にポツダムまでに完成はしなかったのではないか。全員が引き際を間違えた。「押すな押すな」と言っているのに科学の魅力に抗えなかったということだろうか。でも、もし原爆が自国で使われる予定のものだったとしたら?本作だけではオッペンハイマーという人物を描ききれていないので彼の判断は分からないが、他の科学者たちは参加を断ったのではないか?要は“世界を破滅させるもの”だと感じながらも、自国や家族のことではない、遠い小さな島国で起こる他人事として考えてしまったということなのではないかと感じた。そうでなければ、オッペンハイマーだけに責任を負わせるなんて出来ないはず。人間は良識ではありえない恐ろしいことを、幾つもの歯車が狂った時に起こしてしまう愚かで弱い生き物だ。武者震いもあるけど、その事実を叩きつけられた恐ろしさに震えたのも事実だ。2024年公開。

「アイズ・オン・ユー」

アナ・ケンドリック主演他。舞台は1970年代のロサンゼルス。テレビ番組「ザ・デート・ゲーム」の出演者に選ばれたのは、駆け出しの女優シェリル(アナ・ケンドリック)。番組内でシェリルは素性と外見を隠された3人の男性参加者に質問をし、誰をデートをするか決めることになり、写真家と紹介されたロドニー・アルカラ(ダニエル・ゾヴァット)を選ぶ。しかし、実はロドニーは連続殺人鬼だった!シェリルは彼の言動や雰囲気に不安を感じつつも、全国放送の番組内で2人の運命が交錯していくが・・・。実話を基に描く数奇なサスペンス・スリラー。

4点!!主人公も殺人犯も実話の実名そのままで、事件を不穏さやこの時代の不快さを追体験させるような構成になっている。アナ・ケンドリックは特に好きな女優ではないが、彼女の作品選びはいつも面白いので注目している。本作も予定だった監督が降りてしまい、急遽、アナが監督デビューを飾っていて、シリアスな実話もので難しいのにシンプルにまとめていた。舞台となる「ザ・デート・ゲーム」はおそらく当時観ていても、女性を軽視した発言で番組が盛り上がると勘違いしているテレビメディアの不快さを感じたと思うが、メディアだけでなく、アナの同業者の男性のアナに対する態度も、ロドニーが殺人犯だと気付き、制作陣や警察に訴えた女性の扱いも、とても雑で尊厳を踏みにじるような扱いをされていて、当時の女性は、そういう扱いを受けても「何てことないのよ」という態度を取らないと「おかしい」レッテルを貼られてしまうような社会だったのだと感じた。ただ、アメリカに関しては、日本よりもその悪習は改善されることなく根付き続け、今もあまり変わりがないのでは?だから、今わざわざ、70年代のリアリティ・ショーをこき下ろす作品を作ったのではないかと思った。それに加えて、女性がそのような目に日常的に遭っていただけでなく、捕食される側、弱い立場の女性の存在として、常に男性の暴力性の危険にも晒されていたことを踏み込んで描いている。ダニエル・ゾヴァットはテッド・バンディを演じたザック・エフロン並みのイケメン俳優だが、彼が甘いマスクから殺人鬼の顔に変貌する瞬間、特にシェリルとロドニーの駐車場での緊迫した場面は、捕食される側の恐怖を疑似体験したようなゾワッというリアルな追体験があった。ただ、やりすぎていないところが本作の良い点ではあるが、もう少し70年代の悪習を見せた方が観客に意図が伝わりやすいのではと感じた。ロドニーの殺人の背景にある感情がまったく見えないのも(泣いていたけれども)、物語として深みが欠ける原因になっていると思う。あ。あと二人目のヒロイン的な立ち位置だったオータム・ベストという若手女優がめっちゃ可愛かった。情報が出てこないので、新人なのかなと思ったが、これから見つけたい名前のひとりになった。2024年劇場未公開・NETFLIX公開作品。

「一月の声に歓びを刻め」

前田敦子主演他。美しく、凄惨な、罪の歌。三つの島を舞台に、“ある事件”と“れいこ”を探す心の旅。
北海道・洞爺湖。お正月を迎え、一人暮らしのマキ(カルーセル麻紀)の家に家族が集まった。マキが丁寧に作った御節料理を囲んだ一家団欒のひとときに、そこはかとなく喪失の気が漂う。マキはかつて次女のれいこを亡くしていたのだった。それ以降女性として生きてきた“父”のマキを、長女の美砂子は完全には受け入れていない。家族が帰り静まり返ると、マキの忘れ難い過去の記憶が蘇りはじめる・・・。
東京・八丈島。大昔に罪人が流されたという島に暮らす誠(哀川翔)。妊娠した娘の海が、5年ぶりに帰省した。何も話そうとしない海だったが、誠は海の部屋で手紙に同封された離婚届を見つけてしまう。
大阪・堂島。れいこは数日前まで電話で話していた元恋人の葬儀に駆け付けるため、故郷を訪れた。茫然自失状態のれいこはレンタル彼氏をしている男に声をかけられる。過去のトラウマから誰にも触れることができなかったれいこは、そんな自分を変えるため、その男と一晩過ごすことを決意する。やがてそれぞれの声なき声が呼応し交錯していく。ひとりの人間が発したか細い声は、はるか海を超え、波に乗り、どこかの誰かへと届くかもしれない。これは声なき声で繋がるすべての人の物語。

1点!!解説がないと作品の意図するところが分からない映画ってどうなのかな。三島監督の体験を元にアテ書きで書いたそうですが。すべて普通なら経験しえないヘビーなトラウマがベースになっているので、同様の経験をした人なら魂が呼応するように映画に反応出来そう。「メランコリア」で私がそうだったように。3部作のバトンが悪かったので、ひとつの作品として綺麗に流れていかないというか。しかもカルーセルさんの章なんか戯曲的だし舞台的でもあるから、ついていけない人が多そう。監督が目指したターゲット層はどんな人々なのだろう?2024年公開。

「不都合な記憶」

伊藤英明、新木優子主演他。2200年、宇宙に浮かぶスペースコロニーで、理想的な結婚生活を送っている夫婦。しかし、実際は妻は既に亡くなっており、夫は保存しておいた情報を頼りに幸せだった時の妻を求め、何度も彼女を再現していた。再現を繰り返すうちに、彼女の隠された記憶がよみがえり、彼らの結婚生活の秘密が暴かれていく。近未来のスペースコロニーを舞台に、夫婦それぞれの記憶とそこに隠された秘密、そして始める妻からの復讐を描いたSFサイコ・サスペンス・ラブストーリー。

10点!!「Arcアーク」の近未来と人間性の融合が見事だった石川慶監督作品。周囲の評価がイマイチなので、どうなのだろう?と不安を覚えつつ観たが、彼の作風がよく出た切ない愛の物語だった。あらすじを読むと、要素てんこ盛り過ぎ(日本では珍しい)と思ったが、個人的にはラブストーリーの部分が強く余韻として残った。2016年の「エクス・マキナ」から、AIの人間性をさらに成長させ、より親密なものへと発展させていた。毒親育ちの人間は、誰よりも愛を求めるのに、どうしても歪な人間関係になってしまいがちで、永遠に失いたくない関係ですら壊してしまう。ナオキはとても悲しくて切ない人だと感じた。思考が短絡的過ぎるけど、愛を求める気持ちだけは誰よりも強く諦められない人だと思うから。石川作品は難しいテーマが多いので、俳優の負担が大きいが、本作では伊藤英明自身が持つ危うさが上手く作用していた。ワイルドなのに科学者で繊細で愛一択の伊藤英明、サイコじゃなかったら完璧なのに(笑)感情を持ったAIと暮らす場合、普通なら情が湧いてしまうものだが、ナオキは違う。科学者としてマユミを作り上げようとしているから完璧を追求するし、そもそもマユミ本体ですら「こんなのマユミではない」と殺してしまった男だ。社会性に乏しいというか「こうであるべき」から離れられなくて、変化に適応する力に欠けているのだろう。そんな二人に板挟みになるQの結末も切なかった。ぶっちゃけ後半、Qへの愛情がだだ上がり(笑)宇宙描写もとても美しく安っぽい感じもなく、彼らの自宅がマユミが陶芸家だからか、温故知新を感じさせるお洒落なインテリアで素敵だった。撮影監督を「Arc」で組んだポーランド人の監督に任せているし、AmazonGMG配給ということはアメリカ配給になるの?だろうし、それぞれの持ち味が融合した美しいスペースコロニーだった(製作費も多く貰えそうだし(笑))。歪な人間が作り出すものは、「完璧」なんてあと何百年経っても出来得ないのかも知れない。だって人間自身がその歪さを愛おしいと感じているから。作品でナオキを救えなかったことが悲しい。どうか彼の魂が安らかに休めますように、次は幸せな関係性を築けますようにと願わずにはいられなかった。普段のAmazonオリジナル映画が秀作揃いだからか、辛口レビューが多いけれど、本作も二転三転して、よく出来た作品ですよ。2024年劇場未公開・AmazonPrime公開作品。

「ブルー きみは大丈夫」

ライアン・レイノルズ主演他。忘れていた大切なものにきっと出会える―孤独な少女が出会ったのは、子供にしか見えない不思議な“もふもふ”。母親を亡くし、心に傷を抱えた少女ビー(ケイリー・フレミング)。彼女はある日、“子供にしか見えない不思議な存在”のブルー(声:スティーヴ・カレル)に出会う。ブルーが友達だった子供はもう大人になって彼のことを忘れてしまい、このまま新しいパートナーがいないとブルーは消えてしまう運命に・・・。少女は大人だけどブルーが見える隣人の男(ライアン・レイノルズ)の力を借り、ブルーの新しいパートナーになってくれる子供を探すことに。少女はブルーを救えるパートナーを見つけることが出来るのか?かつて子供だったすべての人に贈る、感動の物語。

10点!!観る前はなぜこんなに有名俳優が声優に勢揃いなの?と疑問だったが、めっちゃハートフルで最高の物語だったので、納得。そして、ジョン・クラシンスキー監督ってめっちゃイケメンだったのね(「クワイエット・プレイス」の監督で本作のパパ役)。2024年の「最もセクシーな男」に選ばれたらしい(痩せれば納得)。ケイリー・フレミングも「スター・ウォーズ」に出てただけあって、とても可愛くて目を惹く女優さん。ママ役のキャサリン・ダダリオは少女みたいなのに30歳だと!?ライアン・レイノルズは好きな俳優ではないけれど、本作ではケイリー・フレミングの隣にいるからか、年齢を重ねた俳優の良さみたいなのが出てたなと思った。イマジナリーに育てられたから忘れてたけど、IFの姿がずっと見えてたのかな?日本ではイマジナリー・フレンドがいる子は少し変わってるみたいに扱われがちだけど、アメリカではいるのが普通というか当たり前なのだろうか?私はかなり大きくなるまで物語とキャラクターを自分で作り出すような子だったし、大切にしている人形たちは髪が伸びたり泣いたりしてたけど(妹のはそうなったことがない)、大切にしているからそれは当たり前だと思ってたな~なんてことを思い出してた。今は大人になったけど、それでも望まない突然の引っ越しで大切にしていたぬいぐるみたちを供養にも出せないで置いてこなければならなかったことをとても悔いている。謝っても謝りきれないと思ってる(爆)だから、忘れ去られてしまう切なさと「愛した人の記憶の中で生き続ける」ことの意味にはとても共感出来た。忘れなければ力になってくれるという考え方自体、人間本位な気がするけれど、それすらもイマジナリーで自分の中の彼らが力をくれるということなのだろう。それと本作ですっかり忘れていても、何かをきっかけに思い出すことの出来る記憶があるんだと知った。記憶って大事。良いことも悪いことも全部入ってるから、忘れると良いことも消えちゃう。親子で観たい秀作でした♪2024年公開。

「エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命」

パオロ・ピエロボン主演他。なぜ、僕だったの?1858年、ボローニャのユダヤ人街で、教皇(パオロ・ピエボン)から派遣された兵士たちがモルターラ家に押し入る。枢機卿の命令で、何者かに洗礼を受けたとされる7歳になる息子エドガルド(エアラ・サラ)を連れ去りに来たのだ。取り乱したエドガルドの両親は、息子を取り戻すためにあらゆる手を尽くす。世論と国際的なユダヤ人社会に支えられ、モルターラ夫妻の闘いは急速に政治的な局面を迎える。しかし、教会とローマ教皇は、ますます揺らぎつつある権力を強化するために、エドガルドの返還に決して応じようとしなかった・・・。スピルバーグが映像化を断念した衝撃を超える真実の実話をマルコ・ベロッキ監督が映画化。2023年カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品。

7点!!それぞれの宗教と当時の歴史的背景を知らないと結構解りづらい。ローマ教皇って時々マフィアのドンなのではないかと感じる時がある。長い歴史の中でまじで横暴で鬼畜な言動を繰り返し続けている印象。突然、我が子を奪われ、自分の手の届かないところで二度と相いれない考えに染められてしまったら、と想像したら、親の苦しみは計り知れない。宗教が違くても家族は家族で仲良く同じ時を過ごせばいいじゃん。互いに相手の考えを尊重しないから家族間、宗教間で争わなければいけないなんて悲しいことが起こるんだよ。相手を尊重しない善意はただの迷惑行為で善意とは言わないんだよ。エドガルドの願いは何を信じるかではなく、家族に会いたい、また共に笑い合いたい、それだけだったと思う。信仰って心の拠り所ではあるけれど、自分の世界を極端に狭めるものだと思う。大体、他信仰を排除する宗教もあるけれど、ユダヤ教もキリスト教も他の宗教を潰せとは言ってないから。某テレビ番組アンビリーバボーを観ているようだったけど、人間が扱うようになった結果、宗教が互いを認められない利己的なものに変わってしまった悲しさの象徴を描いている作品だった。2024年公開。

「シビル・ウォー アメリカ最後の日」

キルステン・ダンスト主演他。それは、今日起こるかもしれない。連邦政府から19もの州が離脱したアメリカ。テキサスとカリフォルニアの同盟からなる“西部勢力”と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。「国民の皆さん、我々は歴史的勝利に近づいている―」。就任“3期目”に突入した権威主義的な大統領はテレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。ニューヨークに滞在していた4人のジャーナリストは、14ヶ月一度も取材を受けていないという大統領に単独インタビューを行うため、ホワイトハウスへと向かう。だが戦場と化した旅路を行く中で、内戦の恐怖と狂気に呑み込まれていく―。もし今、アメリカが2つに分断され、内線が起きたら―A24史上最大の制作費で贈る、現代を描いた衝撃のディストピア・アクション。

7点!!戦火の中のロードムービー。実にA24らしい作品だった(笑)独裁的な大統領によってもたらされた狂気の分断世界を描いているのだが、個々のキャラクターの考えがほとんど描かれておらず(党派とかも一切明かされない)、大統領が独裁的なのではないかとわかるのも、彼の人気が3期目に突入しているというところだけだった(大統領の任期は最大2期8年)。わかりにくっ!!淡々と悲惨な戦争を描いているのに映像が幻想的だったり、音楽がシーンにハマリ過ぎててニヤついてしまったり、笑ってたらあっという間に笑えない現実になるよと言われているようだった。全体を通した寓話的な演出が観る人にハマるかハマらないか。でも、人を殺しておいてその場で笑顔で記念写真とか、そこは国民性というか、アメリカ人以外理解できないんじゃない?と思った(ロシアは理解できるか?)。暴力が圧倒的でジャーナリズムが通用しない世界。歴史は繰り返すというけれど、またジャーナリズム旋風が巻き起こる流れはやってくるのだろうか。ジョエル役のヴァグネル・モウラとサミー役のスティーヴン・ヘンダーソンがすごく良かったです。意外とボール投げかけられてて考えさせられる作品(寝落ちしたけど(爆))。2024年公開。

「ありふれた教室」

レオニー・ベネシュ主演他。仕事熱心で正義感の強い若手教師のカーラ(レオニー・ベネシュ)は、新たに赴任した中学校で1年生のクラスを受け持ち、同僚や生徒の信頼を獲得しつつあった。そんなある日、校内で相次ぐ盗難事件の犯人として教え子が疑われる。校長らの強引な調査に反発したカーラは、独自の犯人捜しを開始。するとカーラが職員室に仕掛けた隠し撮りの動画には、ある人物が盗みを働く瞬間が記録されていた。やがて盗難事件をめぐるカーラや学校側の対応は噂となって広まり、保護者の猛烈な批判、生徒の反乱、同僚教師との対立を招いてしまう。カーラは、後戻りできない孤立無援の窮地に陥っていくのだった・・・。学校の<不都合な真実>を抉り出す、衝撃のスコラスティック・スリラー。第96回アカデミー賞国際長編映画賞ノミネート作品。


5点!!悲しいかな、正義感が強いから教師になったのに正義感の強さが仇になるのが教師という職業ですよね(>_<) 何かをしでかしてしまった時に「あの人に限って」と真相をきちんと知るまでは疑わないでもらえたり「何か事情があってやむにやまれなかったのでは」と思ってもらえるだけの人望がカーラにはなかった。厳しいけど、それに尽きると思います。仕事熱心=信頼されるではないですからね。法律違反を犯してしまうところや正義の為なら何をしても許されるのではないかと考える人間は危うい。正義なんて見る角度ごとに違う正義があり、変わっていくものだから。あとは人望と密接な関係で対処能力。こういうカオス状態はさまざまな立場や未成年が集まる場においては、まさに「ありふれた」光景なわけだけど、それを収集させる対処能力がこの学校の管理職にもカーラにもなかった(主に管理職の責任)。聖職者じゃないけれど、教師って本当に小さなほころびも許されない職業なのだなと恐ろしくなりました。これではストレスで離職がわんさか出るのも当たり前だわ。2024年公開。

「ルックバック」

声:河合優実、吉田美月喜主演他。―描き続ける。学校新聞で4コマ漫画を連載している小学4年生の藤野(声:河合優実)。クラスメートから絶賛され、自分の画力に絶対の自信を持つ藤野だったが、ある日の学年新聞に初めて掲載された不登校の同級生・京本(声:吉田美月喜)の4コマ漫画を目にし、その画力の高さに驚愕する。依頼、脇目も降らず、ひたすら漫画を描き続けた藤野だったが、一向に縮まらない京本との画力差に打ちひしがれ、漫画を描くことを諦めてしまう。しかし、小学校卒業の日、教師の頼まれて京本に卒業証書を届けに行った藤野は、そこで初めて対面した京本から「ずっとファンだった」と告げられる。漫画を描くことを諦めるきっかけとなった京本と、今度は一緒に漫画を描き始めた藤野。二人の少女をつないだのは、漫画へのひたむきな思いだった。しかしある日、すべてを打ち砕く事件が起きる・・・。藤本タツキ渾身の青春物語が劇場アニメ化。漫画へのひたむきな思いが、二人の少女をつないでいく・・・。


4点!!賞レースを賑わしていたので気になり鑑賞。アニメなのだけど、いやに現実的な作品だ。藤野は子どもの頃に感じた高鳴りを成長してもキープし続けているけれど、現実の厳しさにもきちんと対応して大人になっていっている。あと性格も醒めていて、かなりひねくれている(笑)小学生時代の「絵ばかり描いてるとヲタクになっちゃうよ」って子どもは残酷だから言いそう(^^;) そんな子も含め、大多数の人は漫画に楽しみや生きがいを貰っているのに、書き手に対してのこの反応はどういうバグなんだ?京アニを彷彿とさせる事件が起きるのと様々なアニメスタジオが本作に関わっているのは偶然なのだろうか?藤野の青春は京本を失ったことで終わりを告げるのだろうか?それでも大学生の年齢になるまでにこれだけの出会いと胸の高鳴りと経験を積めたなら、それはその後の一生を支える大きな力になるに違いないと羨ましくなった。悲しい事件は悲しいけれど、芸術に携わる人間は自分がすべてのベースになっているところがあると思うから。すごく面白かったか?と問われれば微妙だけど、よくまとまっている作品ではあると思う。2024年公開。

「愛に乱暴」

江口のりこ主演他。私ね、わざとおかしいフリしてあげてるんだよ―夫の実家の敷地内に立つ“はなれ”で暮らす桃子(江口のりこ)は、義母から受ける微量のストレスや夫の無関心を振り払うように、センスのある装い、手の込んだ献立などいわゆる「丁寧な暮らし」に勤しみ毎日を充実させていた。そんな桃子の周囲で不審な出来事が起こり始める。近隣のゴミ捨て場で相次ぐ不審火、失踪した愛猫、度々表示される不気味な不倫アカウント・・・。桃子の平穏な日常は、少しずつ乱れ始める。吉田修一が放つ、愛が沸き立つヒューマンサスペンス。

1点!!原作からの改変が凄い・・・桃子がはなれに住む意味も過去のしっぺ返しを食らっていることも説明不足過ぎて何も伝わらない構成になっているので、ただただ眠い。桃子が現状を捨てきれないことで自らを追い詰めてしまっているのは伝わった。けど、淡々と描かれ過ぎていてひたすらに眠い。夫の無関心は大問題だが、義母から受ける微量のストレスはどこにでも転がっているレベルで、これをストレスと感じるか否かは微妙なラインなので、桃子が気にしやすい性格なのだと思う。でも、永遠の愛に裏切られるって頭おかしくなるよね。それはよくわかった。2024年公開。

「関心領域」

クリスティアン・フリーデル、サンドラ・ヒュラー主演他。アウシュビッツ収容所の隣で幸せに暮らす家族がいた。空は青く、誰もが笑顔で、子どもたちの楽しげな声が聞こえてくる。そして、窓から見える壁の向こうでは大きな建物から黒い煙があがっている。時は1945年、アウシュビッツ収容所の隣で幸せに暮らす家族がいた。スクリーンに映し出されるのは、どこにでもある穏やかな日常。しかし、壁ひとつ隔てたアウシュビッツ収容所の存在が、音、建物からあがる煙、家族の交わすなにげない会話や視線、そして気配から着実に伝わってくる。その時、観客が感じるのは恐怖か、不安か、それとも無関心か?本年度最大の衝撃作にして、最大の問題作が今春、あなたに問いかける。第96回アカデミー賞2部門受賞、第76回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作。

9点!!リアリティ・ショーのようなカメラワークで淡々とルドルフ・ヘス一家の日常を追っていく。恐怖のリアリティ・ショー。やだもうエンドロールの音楽怖すぎるから!!あれで劇中の音(と多分臭いもあったはず)の不気味さが全部蘇った最恐過ぎる劇伴。人は慣れる。慣れなかったものが狂人なのか、慣れてしまったものが狂人なのか?これだけ異常なことが見えてしまっていて、フィルターを掛けられるものなのか?奥さんは家の中さえ快適な自分の世界であれば、喜んでアウシュビッツに住み続けたいと言っていた。それとは逆に「人の心を持った」と言われていたルドルフ自身が、次々繰り出される残忍な作戦に心身が対応出来なくなっていった。自ら狂った世界に身を置き続けた時間は、自分に蝕まれ返ってくる。でも、一生狂人のまま過ごせてしまう人もいるだろう。ここ数年のリアルな世界の、人々の異常さへのバイアスの働き方とそれに反発する人々との対峙を見ていると、人は幾らでも狂えるということが嫌と言うほど理解った中で、この作品を観てしまった。遠い未来にある後悔はリアルを生きる私たちの救いにはならない。芸術的・文化的啓発だけは無くならないで欲しい。2024年公開。

「夜明けのすべて」

松村北斗、上白石萌音主演他。思うようにいかない毎日。それでも私たちは救いあえる。月に一度、PMS(月経前症候群)でイライラが抑えられなくなる藤沢さん(上白石萌音)はある日、同僚・山添くん(松村北斗)のある小さな行動がきっかけで怒りを爆発させてしまう。だが、転職してきたばかりにもかかわらず、やる気が無さそうに見えていた山添くんもまたパニック障害を抱えていて、様々なことをあきらめて、生きがいも気力も失っていたのだった。職場の人たちの理解に支えられながら、友達でも恋人でもないけれど、どこか同志のような特別な気持ちが芽生えていく二人。いつしか、自分の症状は改善されなくても、相手を助けることはできるのではないかと思うようになる。人生は想像以上に大変だけど、光だってある―ささやかな、でも確かなつながりが照らす、かけがえのない物語。

6点!!賞レースで高評価を得ていたので鑑賞。松村さんの作品は観たことがあったけれど、新海作品の実写をやることになった彼が今どのくらい仕上がっているのかも気になったし。これは、今、社会に適応しにくい持病を抱えて「人生終わった」と思っている中学生~若者に観て欲しい作品ですね。学校とかでどんどん上映して欲しい。病を治せなくてもすべてに適応出来なかったとしても、病と上手く付き合いながら共存して生活や小さな幸せを諦めなくてもいい方法があるということを広く知って欲しいです。あと、ひとつの病気でも幅広い症状があり、社会的に理解されつつあるものもあれば、まったく理解が得られていないものもあることとか。自分の周りを優しい世界にする為に、知ろうと思ってもらえたら。会社に自分が体調悪い時に家までちょっと来てくれる、気遣ってくれる仲間がいるって理想だな。飲み会とかわいわいなくても誰かが気にかけてくれている、それも表面上ではなく、自分のために少し苦労してくれる人。人との繋がりが希薄な世代ほど人との繋がりに飢えてたりするものだと思います。優しい人しか出てこないから現実的ではないかも知れないけど、優しい人しか出てこない世界でも生き辛さで追い詰められてしまう社会だということも認識出来るかと。2024年公開。

「コンセント/同意」

キム・イジュラン主演他。彼女の信じた愛は、やがて絶望に変わった。文学を愛する13歳の少女ヴァネッサ(キム・イジュラン)は、50歳の有名作家ガブリエル・マツネフ(ジャン=ポール・ルーヴ)と出会う。彼は自身の小児性愛嗜好を隠すことなくスキャンダラスな文学作品に仕立て上げ、既存の道徳や倫理への反逆者として時代の寵児となった著名人だった。やがて14歳になったヴァネッサは彼と<同意>のうえで性的関係を結び、そのいびつな関係にのめり込んでゆく。それが彼女の人生に長く暗い影を落とす、忌むべきものになるとも知らず・・・。本国フランスで異例の大ヒット。国家を動かした衝撃の告発。今こそ知るべき30年後の戦慄の告発。50歳の小児性愛作家と14歳の少女の間に起こった“事件”。

10点!!衝撃的で強烈。ガブリエルを告発する本を映画化したはずなのに、全体がガブリエルが“愛”だと主張するものに覆い尽くされていた。執着と愛はどう違うのだろう?失って一生が壊れるほどのものは愛?執着?少女だったヴァネッサには50歳の有名作家ガブリエルは、大人で何でも教えてくれてすべてを委ねられる“理想の伴侶”に思えたのだろう。だが、歪んだ愛と倫理観を持つ人間は“大人の男”に見せるのが上手いだけで、実際は本当に幼い。歪み故にキャパシティもとても狭い。だから無意識のうちに自分を認めてくれるグルーミング出来る幼い相手を求めるのか?でも、その自分に向けられる歪んだ感情は、愛でもそうでなくとも、とても濃厚で長く摂取し続けると麻薬と同じで抜けられなくなっり沼ってしまう。そして、とても嫌なのに、いなくなることの恐怖が同時に存在する混沌に陥る。自分以外の多くの少年少女と関係を持っていると知ってなお、ガブリエルに囚われ続けてしまうのは、もう最悪の麻薬中毒なのだろう。世間がガブリエルの著書に惹かれてしまうのも理解出来た。歪んだ濃厚な“愛”を装った文章は“禁断”の魔力があるから。だから、感情や倫理観が確率されていない未成年と関係を持つことは犯罪なのかと、この犯罪性の根底を見せつけられた気がした。おぞましい悪魔のような存在のはずなのに目が離せない強烈な作品だった。2024年公開。

「正体」

横浜流星主演他。信じる、君を。この世界を。5つの顔を持つ逃亡犯。誰が彼を救えるのか?日本中を震撼させた殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑判決を受けた鏑木(横浜流星)が脱走した。逃亡し日本各地に潜伏する鏑木と出会った紗耶香(吉岡里帆)、和也(森本慎太郎)、舞(山田杏奈)そして鏑木を追う刑事・又貫(山田孝之)。又貫は紗耶香らを取り調べるが、それぞれ出会った鏑木はまったく別人のような姿だった。間一髪の逃亡を繰り返す343日間。鏑木の正体とは?そして顔を変えながら日本を縦断する鏑木の【真の目的】とは。真相が明らかになったとき、信じる想いに涙があふれる感動のサスペンス!「余命10年」藤井道人監督最新作。

3点!!演技に対する前評判が良かったので、期待し過ぎていて肩透かしでした。ごく普通で意外性の欠片もない話。マスコミ関係者の紗耶香と芯の姿を目の当たりにした舞は分かるけれど、和也はあれだけしか接してなくて助けてもらったからって、そんなに簡単に人のことを信じられるかな?人の多面性は考慮しないのかな?あまりにいい話になり過ぎていて、映画のエンタメ性に欠けていた。あと、偏見だとは思うけれど、鏑木は施設育ちということは施設に来る前もその後もそれなりに人の厳しさを浴びてきているわけで、それでも「人を信じたい」という鏑木の過去はどういう育ち方をしたのか?という部分がまったく描かれていなかったので、説得性にも欠けていた。つまり色々欠けている中でただ良い話が展開されていた。藤井道人監督、プロデューサーとしては長けているけど作家としてはつまらない川村元気みたいにならないといいけど(爆)2024年公開。

「先生の白い嘘」

奈緒主演他。高校教師の原美鈴(奈緒)は、教卓の高みから生徒達を見下ろし観察することで、密かに自尊心を満たしながら、女であることの不平等さから目を背けていた。ある日、美鈴は親友の淵野美奈子(三吉彩花)から早藤雅巳(風間俊介)と婚約したと告げられる。早藤こそ、美鈴に女であることの不平等さの意識を受け付けた張本人だった。早藤を忌み嫌いながらも、快楽に溺れ、早藤の呼び出しに応じてしまう美鈴。そんなある日、担当クラスの男子生徒・新妻祐希(猪狩蒼弥)から衝撃的な性の悩みを打ち明けられ、思わず美鈴は本音を漏らしてしまう。新妻は自分に対して本音をさらけ出した美鈴に魅かれていき・・・。そして、歪んだ愛憎渦巻く人間模様は思いも寄らぬ狂気の世界へと向かっていく。その先で美鈴が見る景色とは?その感情は、あなたの中にもきっとある。男女の性の不条理に切り込み、人の奥底に抱える醜さと美しさをエグる、2024年、最もセンセーショナルな衝撃作。

8点!!原作は序盤しか読んでないです。暴力・・・って定義が曖昧なものは難しい。精神論の問題も孕むから、誰かにとっての愛の行為が誰かにとっては暴力になる。人は弱いのにその矛盾を抱え込もうとするから最終的に自分を傷つけてthe endになりかねない。そして、自分にとっての暴力を他人や愛する人に理解してもらうことはとても難しく不可能に近い(のに諦めないからthe endになるのループ)。早藤の闇の根底は何なのだろう?というのが描けておらず、風間くんの名演をもってしても雰囲気でしか伝えることが出来てなかったのが残念。他のキャラの闇の発端は明確にされているので。人が人と関わる以上、誰も傷つけず、誰にも付け込まず付け込まれずというのも無理なのだろう。すごく、暴力の範囲や種類について考えさせられた。DV関連の作品は避けてきたけれど、本作は観て良かったと思えた。それでも、愛する人を傷つけず触れる方法は見つからない。この矛盾は美鈴のように真正面から向き合ってしまう人間には抱えきれないのかも知れない。ずっと小さくて綺麗なものだけを拾い上げて生きていくことは出来ない。愛され、理解されたいのに人と関わることはキツくて怖い。それでも諦めきれない私に穏やかな幸せを感じられる日々はくるのだろうか。2024年公開。

「ブルーピリオド」

眞栄田郷敦主演他。情熱は、武器だ。ソツなく生きてきた高校生・矢口八虎(眞栄田郷敦)は、美術の授業の課題「私の好きな風景」に困っていた。悩んだ末に、一番好きな「明け方の青い渋谷」を描いてみた。その時に絵を通じて初めて本当の自分をさらけ出せたと感じ、美術に興味を持ち始め、のめりこんでいく。そして、ついに国内最難関の美術大学への受験を決意するのだが・・・。立ちはだかる才能あふれるライバル達。正解のない「アート」という大きな壁。経験も才能も持っていない自分はどう戦う!?八虎は【自分だけの色】で描くことができるのか。生きてる実感が持てなかった。あの青い絵を描くまでは―これは、からっぽだった俺が、初めて挑む物語。「マンガ大賞2020」受賞!国内外で絶賛された傑作漫画が、ついに実写映画化!


3点!!原作未読です。ポスターカットが4人の構図だったので、4人同じくらいの比率で描かれるのだと思っていましたが、しっかり主人公は八虎ひとりでした。漫画だとバランスよく描けている気がする。だって、他の4人のキャラの背景が薄すぎたから。世田介(板垣李光人)なんて全然分からない(^^;)まるちゃん出番めっちゃ少ない。いわゆるスポ根系青春映画だと思うのですが、どんどん夢に近づいていく高揚感みたいなのは感じられず。眞栄田郷敦がこれまでの作品で見せてきた魅力も全然描けてなくて。萩原健太郎監督の「東京喰種」「サヨナラまでの30分」どちらも青春映画として好きだったので、何だか残念でした。原作再現率は高いらしいのですけどね、知らない人が観るとこんな感想になっちゃいました。2024年公開。


「メイ・ディセンバー ゆれる真実」

実在のスキャンダルを当事者の心で追うか、よそ者の目で追うか―。当時36歳の女性グレイシー(ジュリアン・ムーア)はアルバイト先で知り合った13歳の少年と情事におよび実刑となった。少年との子供を獄中で出産し、刑期を終えてふたりは結婚。夫婦は周囲に愛され平穏な日々を送っていた。ところが23年後、事件の映画化が決定し、女優のエリザベス(ナタリー・ポートマン)が、映画のモデルになったグレイシーとジョー(チャールズ・メルトン)を訪れる。彼らと行動を共にし、調査する中で見え隠れする、あの時の真相と、現在の秘められた感情。そこにある“歪み”はやがてエリザベスをも変えていく・・・。36歳の女性と13歳の少年が起こした“メイ・ディセンバー事件”を追う、ある女優。よそ者である彼女の憶測と当事者の本心、新たな証言。すべてが絡み合い、観ている貴方の真実もゆらぎ始める。観る者すべてを“抜け出せない万華鏡”に誘う衝撃のヒューマンドラマ。

8点!!実在の事件は実在の事件としてあって、しかし、本作の舞台となっている事件から23年後の物語が実在に基づいているかは分からない。それぞれのキャラクターの行く末を観客にほぼ丸投げに近いような終わり方なのに、冒頭からラストまでの心理戦、描写がそれぞれの闇を覗き込むような仄暗い丁寧さがあり、とても奇妙で重厚な人間ドラマとなっていた。ナタリー・ポートマンが選びそうな作風だ。人生の負い目がある者が“誰かに見透かされ続ける”というのは何の危害を加えられていなくても、自ら破滅へと向かってしまうものだと思う。エリザベスとジョーはあれだけのすれ違いを抱えているのに、一見、上手くいっている風の夫婦を続けていられたのは“見られていた”からなのだろうか?ジョーの苦しみが突出していて、愛する人の、しかも自分よりかなり人生経験の未熟な彼の苦しみを見ないふりし続けられるエリザベスが私には理解出来なかった。周囲の人々が沈黙しているのも含め、エリザベスにはそれだけ周囲を黙らせる狂気さがあったということではないだろうか?と感じた。(実際、ジュリアン・ムーアの演技は怖かった)劇中映画は誰も満足出来るものが完成するとは思えないけど、本作の映画としての人間ドラマは一見の価値ありです。2024年公開。

「八犬伝」

役所広司主演他。正義で何が悪い。里見家の呪いを解くため、八つの珠に引き寄せられた八人の剣士の運命をダイナミックなVFXで描く「八犬伝パート」と、その物語を生み出す作家・滝沢馬琴(役所広司)と浮世絵師・葛飾北斎(内野聖陽)の奇妙な友情を通じて描かれる「創作パート」が交錯する新たな「八犬伝」。失明してもなお、口述筆記で書き続け、28年の歳月を費やし106冊という超大作を書き上げた馬琴の偉業は、日本文学史上最大の奇跡として今なお語り継がれる。なぜ彼は、失明しても諦めなかったのか?「八犬伝」に込めた馬琴の想いにあなたは涙する。【虚】と【実】が交錯する前代未聞のエンターテインメント超大作!

7点!!「里見八犬伝」を読んだことがなく、滝沢馬琴についても学校で習う以上のことは知らないところからスタート。原作の山田風太郎は好きな作家で、本作は読んだことがないけれど、山風+奇想天外な描写が得意な曽利監督なら面白いかもと鑑賞。現実パートの俳優陣が玄人俳優揃い過ぎて、物語パートがちょっと学芸会に見えてしまった。再現ドラマみたいで俳優陣も今ブレイク直前くらいの若手を揃えたから、まだ個性が出せていなくて、揃うと誰が誰だかわからない・・・。「八犬伝」の物語自体も、伏姫の件りからなんでそうなった?みたいな摩訶不思議のオンパレードで、その後の展開もダイジェスト過ぎる。原作読んでから観て当たり前の作り方だけど、今の若者は「里見八犬伝」は読んでないのよ~(>_<) でも、全く知らないで観ると、そういう話だったんだという面白さはありました。あと、八房おっきい&可愛い。現実パートは俳優陣の熱演に惹き込まれ、怖いやら泣けるなら、そっちの方がよっぽどドラマティックな人生でした。パート切替のブツ切れ感はなく、エンタメとしては楽しめたけど、山風と聞いてしまうともっとおどろおどろしさと現実にはあり得ないすっごい描写を期待してしまっていたので、そこは物足りなかったかな。2024年公開。

「ナミビアの砂漠」

河合優実主演他。私は私が嫌いで、大好き。2020年代、先の見えない世界の中で、彼女は“今”を生きている。世の中も、人生も全部つまらない。やり場のない感情を抱いたまま毎日を生きている、21歳のカナ(河合優実)。優しいけど退屈なホンダ(寛一郎)から自信家で刺激的なハヤシ(金子大地)に乗り換えて、新しい生活を始めてみたが、次第にカナは自分自身に追い詰められていく。もがき、ぶつかり、彼女は自分の居場所を見つけることができるのだろうか・・・?いじわるで、嘘つきで、暴力的。そんな彼女に誰もが夢中になる!山中瑤子監督×河合優実主演。2人のケミストリーが日本映画に新しい風を吹き込む!第77回カンヌ国際映画祭国際映画批評家連盟賞受賞作。

5点!!精神疾患を患っている人は大抵、自分なりのルールや潔癖がある。そして、自分がどうなりたいのか、何が嫌なのか、もがくところまでいけずにいる段階の人がいる。それがカナだと思う。「何もわからない」ことがわからず、募るのは焦燥感と爆発しそうな劣情ばかり。観客がカナを観た時に何を感じるかは、観客の状況次第で変わる映画だと思った。私は、自分が安全に生き抜ける場所を、いても存在まるごと許してもらえる場所を探している子だと感じた。それも21歳という妥協を知らないレベルの高さで。だから、完璧じゃないことが許せない。そんなカナのことを好きな二人の男性が登場するが、二人ともなぜカナから離れていかないのだろう?これは普通の若い男性が手に負えるレベルじゃないぞっていう。おそらく、二人もカナ本人ではなく、それぞれが想うカナをフィルター通して観ているのかなと感じた。ハヤシとカナは続かないと思う。腐れ縁にはなるかも知れないけど、今は同じ水飲み場にいるだけ。河合優実と金子大地、寛一郎もなかなか良くて、役者の魅力で保たせている作品だった。「わからない」のすぐ隣のスタートラインはない。カナはスタートラインに立つことが出来るのだろうか?2024年公開。


「キングダム 大将軍の帰還」

山崎賢人主演他。忘れられない戦いが始まる。秦と趙の全てを懸けた<馬陽の戦い>で、敵将を計った信(山崎賢人)と仲間たちの前に突如として現れた、その存在が隠されていた趙国の総大将・ほう煖(ほうけん)(吉川晃司)。自らを<武神>と名乗るほう煖の圧倒的な力の前に、次々と命を落としていく飛信隊の仲間たち。致命傷を負った信を背負って、飛信隊は決死の脱出劇を試みる。「俺達で、信を守り抜くんだ―。」一方で戦局を見守っていた王騎(大沢たかお)は、趙に潜むもう一人の化け物の存在を感じ取っていた。ほう煖の背後で静かにそびえる軍師・李牧(小栗旬)の正体とは?王騎とほう煖はなぜ馬陽の地に導かれたのか?今、因縁が絡み合う馬陽の地で忘れられない戦いが始まる―。キングダムの<一つの時代>が遂に終わる。全てをかけた戦いの果てにある景色を目撃せよ。


9点!!原作未読です。「大将軍の帰還」ってそういう意味だったのか~(涙)何となく王騎はずっと死なないとおもっていたので、最後にタイトルバックが表示されたのが感慨深くて沁みました。最初から最後までオールアクションで、ずっと「おお~~」「ドドドドッ」と轟音が鳴っているのは没入しやすくて良かったけど、音バランスが悪く台詞がめっちゃ聞きづらかったです(>_<) アクションは冒頭のほう煖と羌カイ(清野菜名)のバトルから凄い見応え!!清野菜名アクションの真骨頂。飛信隊の結束もいつの間にか阿吽の呼吸で動けるまでに成長していて、シリーズを積み上げてきた感慨深さがありました。これまでのキャストの殆どが戦場に勢揃いしていて、1作目は漫画の実写化という感じでしたが、もうここまで来ると一大スペクタクルで壮観でした。王騎の最後のシーンは綺麗な森で皆に囲まれてってちょっと綺麗過ぎて、いきなり戦場ものからおとぎ話に転換したのかと(^^;) 大沢たかおはこれまでそんなにガチアクションしているイメージがなかったのですが、今作では演技も含めて凄かったですね~日本アカデミーの最優秀も納得の名演でした。原作を知らないので、ここで終わりなのか~有名キャスト使ってるけど「あなた誰?何?」みたいな無駄遣い状態で終わるの?みたいな役柄もあったけれど、全体としてはとても面白かったです。キリがないけどもっと盛り上がるなら続きが観たい(笑)2024年公開。

「私にふさわしいホテル」

のん主演他。文学史上、最も不遇な新人作家の文壇下剋上が始まる!新人賞を受賞したにも関わらず、未だ単行本も出ない不遇な新人作家・相田大樹こと中島加代子(のん)。その原因は、大御所作家・東十条宗典(滝藤賢一)の酷評だった。文豪に愛された「山の上ホテル」に自腹で宿泊し、いつかこのホテルにふさわしい作家になりたいと夢見る加代子は、大学時代の先輩で大手出版社の編集者・遠藤道雄(田中圭)の力を借り、己の実力と奇想天外な作戦で、権威としがらみだらけの文学界をのし上がっていく。ズタボロになっても何度でも立ち上がり、成功を己の力で引き寄せていく加代子の奮闘に、手に汗握りながらいつしか虜になっていく。驚いて、笑えて、スカッと元気をもらえる“痛快逆転サクセスストーリー”が誕生した。

3点!!原作読んでます。原作は主人公に共感出来ずイマイチだった印象なのですが、本作ではのんワールド炸裂で見事に魅せる世界観を作り上げています。他の女優がやったらぶっ飛んだ気狂い女になってしまうところを、のんの不思議ちゃんな魅力で主人公として成立させている(凄)滝藤さんもハジけてたし、田中圭ももう少しハジけちゃっても良かったんじゃないかな(笑)あと、山の上ホテルの魅力をもう少し見せて欲しかったです。ここに泊まりたいという気持ちにさせて欲しかった。ストーリーは可もなく不可もなく、何も考えずに笑って楽しめる感じです。途中少しダレて眠かったけど。あと、最後に「昭和」と言われるまで公衆電話などヒントはあったけれど、昭和だと全く分からない作りになっていたのも残念。2024年公開。

「ポライト・ソサエティ」

ブリヤ・カンサラ主演他。向かうところは敵だらけ。ロンドンで暮らす高校生リア(ブリヤ・カンサラ)の夢は、スタントウーマンになること。学校では変わり者扱い、親からも将来を心配される彼女の唯一の理解者は芸術家を志す姉のリーナ(リトゥ・アリヤ)だった。しかしリーナは富豪一家の子息であるプレイボーイ(アクシャイ・カンナ)と恋に落ち、まさかの急展開で彼と結婚し海外へ移住することに。だが、その結婚の裏にはとんでもない陰謀が隠されていた・・・。カンフー×ボリウッド×シスターフッド。凝り固まった社会をふっとばせ!すべてが型破りの青春バトル・アクション。

7点!!気の強い姉妹に手を出したらダメ!という警告ハチャメチャムービー。これはサンダンス映画祭で盛り上がりそうだ(笑)前半はリアが中二病気まっしぐらで、根拠なくサリムを悪人だと決めつけて違ったらどうするの?と大迷惑な妹なポジションだったけれど、サリム一家の企みを見つけてからは一気に加速。リア、汚点見つかって良かったね(笑)リアと姑の対決がヒロインvs魔女そのもので、エステ脱毛が拷問みたいになってます(笑)脱毛させて悪魔笑いする姑ってなに(笑)一家の企み、姑のクローンを作っても、クローンは別個体なわけで姑自身は生き直せないけど、どうするつもりだったのだろう?まさか乗り移れるの?(怖)途中、リアの心情を表すのに昭和歌謡(瀬川マキ「ちっちゃな時から」)を使う監督のセンス(笑)リアは普段はぶっ飛びはねっ返り娘だけど、インドの礼服を着ると誰でも美人になれちゃうのね~(凄←失礼)血塗れの礼服でハンバーガーを食べる姉妹のシーン、最高。ハンバーガーがめっちゃ美味しそうに見える。姉役のリトゥ・アリヤが美人さん。ハリウッドのネクストブレイクらしい。妹を応援しているうちに姉の方がアクション上手くなっちゃうっていう(笑)二人揃うと「ガオー!!」って聞こえてきそうなムスリムの慣習を一気にぶっ壊す異色?だけど笑いが止まらないシスターフッドムービー。2024年公開。

「ゴールド・ボーイ」

岡田将生主演他。きっと、あなたにも殺したい人がいる。それは、完全犯罪のはずだった。まさか少年たちに目撃されていたとは・・・。義父母を崖から突き落とす男(岡田将生)の姿を偶然にもカメラでとらえた少年たち。事業家の婿養子である男は、ある目的のために犯行に及んだのだ。一方、少年たちも貧困や、家族の問題を抱えていた。「僕達の問題さ、みんなお金さえあれば解決しない?」朝陽(13)(羽村仁成)は男を脅迫して大金を得ようと画策する。「何をしたとしても14歳までは捕まらないよ。少年法で決まってるから。」殺人犯と少年たちの二転三転する駆け引きの末に待ち受ける運命とは・・・。総再生回数20億回を誇るアジア最高峰ドラマの原作小説の舞台を沖縄に移し、豪華キャストが集結したクライム・エンターテインメント!

6点!!火サス×小さな(悪い)恋のメロディな青春映画??もとい、サイコパスvsサイコパスの騙し合い劇?色々な要素がレトロでノスタルジックな映像と音楽の中で絡み合っていて、先の展開は読めているのに没入してしまった。彼はどうしてこうなってしまったのか?両親が離婚した時から?不倫相手の子が同級生になった時から?あの閉鎖的な島が彼にとってはすべてで、それは彼にとってどれほど追い詰められるものだった?岡田将生の悪役としての魅力や星乃あんなの瑞々しいきらめきなどエッセンス的な魅力も光るが、その主軸にいる羽村仁成の混沌とした闇が凄い。怖い怖い怖い(寝れない)。よく出来たストーリーだったけれど、ヒント与えすぎなのと地味なのでヒット性は薄いかも。原作者のズー・ジンチェンは中国の東野圭吾と言われている方らしいです。あと主題歌、台無しだよ~最悪だよ~(>_<) 2あるのかな?フリだけかな?2024年公開。

「十一人の賊軍」

山田孝之、仲野太賀主演他。信念に挑め。自由を勝ち取れ。新潟の新発田藩家老・溝口内匠(阿部サダヲ)は進退窮まっていた。日本は二つに分裂し、戊辰戦争が勃発。「新しい時代を切り開く!」という強い使命感を掲げ進軍をつづげる新政府派「官軍」によって、旧幕府軍は徐々に東国へと追い詰められていた。密かに官軍への寝返りを画策する新発田藩の目の前には、終に官軍の到着が迫っていた・・・。そんな折に、旧幕府派の奥羽越列藩同盟軍が出兵を求め、新発田城へ軍を率いて押しかける!城から退かない同盟軍と迫りくる官軍が鉢合わせしてしまっては、新発田は戦火を免れない!まさに絶体絶命!一刻の猶予も無い溝口内匠は一計を案じ、官軍の進撃を食い止める起死回生の一手として【砦の護衛作戦】を命じる。集められたのは、殺人、賭博、火付け、密航、姦通・・・などで収監された、死罪になるべき人道外れた十一人の罪人たち。圧倒的不利な命懸けの過酷ミッションとは、【官軍が砦へ侵攻するのを防ぐこと】ただそれだけ。死を覚悟していた彼らに見えた、「生きる」という一筋の希望。勝てば、“無罪放免”という契りを信じ、罪人たちは己のために突き進む。果たして、彼らは未来を掴み取ることができるのか!?新発田軍、同盟軍、官軍・・・三者の思惑が交錯するなか、「己の誇り」「故郷に残した愛する人を護るため」―それぞれの執念が轟く、十一人の壮絶な戦いがいま始まる!日本近代史最大の激戦・戊辰戦争の陰で起きた、新潟・新発田藩の歴史的な裏切り。その史実から着想を得た、脚本家・笠原和夫の幻のプロットが白石和彌監督によって新たなステージへと昇華される。バカげた世の中、もう我慢ならねぇ!全世界驚愕のエンターテインメント超大作!

10点!!や~期待通り期待以上(^^) 笠原さんのプロットを白石組が撮るとエンタメばっちりエグさもばっちり、殺陣もアクションも気迫と迫力がすっごい見応え!!新発田藩の寝返りを舞台にしているのも、これまでに観たことがなくて面白い。ただ、音量バランスが悪くて台詞が聞き取りにくすぎる(>_<) 俳優陣も豪華過ぎて、逆にノイズになる部分もあったかな。山田孝之と太賀は安定の演技力で、特に太賀の大立ち回りのシーンの気迫は彼にしか出せない名演だったと思います。あと、こういうのにアイドル起用するのは苦手なのですが、鞘師里保さんの演技が上手過ぎてびっくり。本当にセンスと度量のある子なのだな~と初めて拝見しました。本山さんの殺陣も正体を明かすまで「強盗殺人で何故そんなに強くて殺陣が綺麗なの」と突っ込んだけど、ちゃんと見せ場があってシビれた~(//^^//) 比較的若いキャストばかりなので、こういうがっちり史実系日本チャンバラな映画を若者に観て欲しいなぁと思います。面白かった~♪ 2024年公開。

「侍タイムスリッパー」

山口馬木也主演他。幕末の侍が時代劇撮影所にタイムスリップ?!時は幕末、京の夜。会津藩士高坂新左衛門(山口馬木也)は密命により長州藩士を討つ任を帯びていた。いざ両者が刃を交えた刹那、落雷轟き、新左衛門は現代の時代劇撮影所へとタイムスリップしてしまう。守ろうとした幕府がとうに滅んだと知り愕然とする新左衛門。一度は死を覚悟したものの「我が身を立てられるのはコレのみ」と刀を握り締め、鍛え上げた剣の腕だけを頼りに撮影所の門を叩く。「斬られ役」として生きていくために・・・。新鋭・安田淳一監督がインディーズの限界をぶった斬る!爆速の2時間11分。第48回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作品。

6点!!自主制作映画ではあるが、主演に名の知れた俳優を使っているので、演技が安定していて観やすい。予算ないからかなと思ってしまうようなシーンも幾つかあるが演出が上手く、コテコテの笑いを織り交ぜながらのテンポ感も良い。手作り感満載で油断させられてからの後半の展開には驚かされたし、殺陣も人間味があって響いた。でも、これを有名俳優だらけで見せられたらつまらない気がするので、映画好きが皆で楽しむ映画ジャンルではあると思う。山口馬木也があざといので観れたが、評価はしにくい。。。2024年公開。

「ラストマイル」

満島ひかり主演他。ある日、届いた荷物は爆弾だった―日本中を震撼させる4日間。11月、流通業界最大のイベントのひとつ“ブラックフライデー”前夜、世界規模のショッピングサイトの関東センターから配送された段ボール箱が爆発する事件が発生。やがてそれは日本中を恐怖に陥れる謎の連続爆破事件へと発展していく―。関東の4分の3を担う巨大物流倉庫のセンター長に就任したばかりの舟渡エレナ(満島ひかり)は、チームマネージャーの梨本孔(岡田将生)と共に、未曾有の事態の収拾にあたる。誰が、何のために爆弾を仕掛けたのか?残りの爆弾は幾つで、今どこにあるのか?決して止めることのできない現代社会の生命線―世界に張り巡らされたこの血管を止めずに、いかにして、連続爆破を止めることができるのか?すべての謎が解き明かされるとき、この世界の隠された姿が浮かび上がる。「アンナチュラル」「MIU 404」と繋がるシェアード・ユニバース・ムービー。


3点!!ドラマ班の人が作ったキャストの豪華さに頼った作品だと思いました。人間心理の描写に焦点を充てたいのだろうけど、舞台設定やユニバースにしたことでゴチャゴチャしてしまい。どこを中心に見ればいいのか分からない。自分と同じく心が壊れてしまった人が同じ場所にいたこと。同じ状況に陥ったことのあるエレナだからこそ心が突かれたのだろうけど、それが満島ひかりの演技一点に頼りきっていて、演出に欠けていたように感じた。野木さんは良く出来た脚本を書くけれど、スカッとしない結末は好みが分かれるのでドラマ向き。医療や警察などは別として、大抵の仕事が数日止まっても世界が廻る。それよりも人の命の方が大事。当たり前だけど、その当たり前が実現可能なことをコロナ禍が証明してしまった。でも日本は元に戻ってしまった。死と隣り合わせでより苦しくなったこの世界でまだそんなに働きたいのか、日本人。てな作品でした(雑)2024年公開。

「破墓 パミョ」

チェ・ミンシク主演他。何かが出てきた。巫堂ファリム(キム・ゴウン)と弟子ボンギル(イ・ドヒョン)は、後継ぎが代々謎の病気にかかるという奇妙な家族から桁違いの報酬で依頼を受ける。すぐに、先祖の墓が原因だと気づき、お金の臭いを嗅ぎつけた風水師サンドク(チェ・ミンシク)と葬儀師ヨングン(ユ・ヘジン)も合流する。やがて、4人はお祓いと改葬を同時に行うが、掘り起こした墓には恐ろしい秘密が隠されていた・・・。2024年韓国NO.1大ヒット!墓に隠された恐ろしい秘密を掘り返すサスペンス・スリラー。

9点!!キム・ゴウン、イ・ドヒョン目当てでホラーチャレンジ(ホラー見慣れてません)。怖かった~ずっと全身に力が入ってたから頭痛と気持ち悪くなった(^^;) 日本人としては将軍・・・ではなく武将誰~?(石田三成説あり)と気になる終わり方だった。色々名前が出てくると架空じゃなくて実在なのかな?と思いがちだけど、どっちなのだろう?時代設定がわかりにくい・・・。2段階設定になっていること以外はホラーというよりはスリラーで、お化け屋敷みたいな作品でした。私はホラーを見慣れていないので面白かったけど、韓国ではどこが評価されたのだろう?除霊とか起こることは派手でエンタメって感じだったけど、作りとしてはストレートだったので。キム・ゴウンとチェ・ミンシクの演技が流石の凄味でした。イ・ドヒョン、日本語上手。チェ・ミンシクは「オールドボーイ」の印象が強かったので、なんか意外にも丸くて可愛いおじいちゃんになってました(笑)はぁ~怖かった、眠れない、どうしよう。2024年公開。

「はたらく細胞」

永野芽郁、佐藤健主演他。あなたを守ってはたらきます!映画史上最小の主人公―その名は、細胞。人間の体内の細胞、その数なんと37兆個。酸素を運ぶ赤血球、最近と戦う白血球、そのほか無数の細胞たちが、あなたの健康と命を守るために日夜全力ではたらいているのだ。高校生・漆崎日胡(芦田愛菜)は、父親の茂(阿部サダヲ)と二人暮らし。まじめな性格で健康的な生活習慣の日胡の体内の細胞たちは、いつも楽しくはたらいている。一方、不規則不摂生に日々を過ごす茂の体内では、ブラックな労働環境に疲れ果てた細胞たちがいつも文句を言っている。親子でも体内はえらい違いだった。仲良し親子のにぎやかな日常。しかし、その体内への侵入を狙う病原体たちが動き始める・・・。漆崎親子の未来をかけた、細胞たちの「体内史上最大の戦い」が幕を開ける!?シリーズ累計1000万部突破のメガヒットシリーズがまさかの実写映画化!笑って泣けてタメになる【はたらく細胞ワンダーランド】へようこそ!!

8点!!とっても楽しいお勉強ムービー♪驚くべき豪華俳優陣が無駄なく生かされています。体内細胞の詳細は細かく学校で習った記憶はあまりなく(忘れてるだけかも(爆))擬人化することでとてもわかりやすく可愛いかったり格好良かったりするキャラになっているところが興味深く楽しめました。一度体内の細胞を死滅させても人は短時間であれば生き延びられるのか~とか気づかなかったことも多くて勉強になりました。あとは、健康を意識して真面目に生きている人ほど重病になったりするよね~あの人、超不摂生なのになんだかんだ長生きだよね~とかいるよねと世の不公平を目の当たりにする感じ。これ、学校の教材にしてほしいな。2024年公開。

「墓泥棒と失われた女神」

ジョシュ・オコナー主演他。誰もが幻想を探してる。80年代、イタリア・トスカーナ地方の田舎町。忘れられない恋人の影を追う、考古学愛好家のアーサー(ジョシュ・オコナー)。彼は紀元前に繁栄した古代エトルリア人の墓をなぜか発見できる特殊能力を持っている。墓泥棒の仲間たちと掘り出した埋蔵品を売りさばいては日銭を稼ぐ日々。ある日、希少な価値を持つ美しい女神像を発見したことで、闇のアート市場をも巻き込んだ騒動に発展していく・・・。ギリシャ神話の悲劇のラブストーリーをモチーフにした<幻想(キメラ)>を追い求める墓泥棒たちの数奇な物語。スコセッシ、ポン・ジュノ、グレタ・カーウィグら世界中の映画人がほれ込んだ才能アリーチェ・ロルヴァケル監督最新作。

5点!!すべては夢か幻想か・・・ギリシャ神話の「オルフェウスとエウリュディケ」の悲恋がモチーフとなっていて、主人公アーサーは終始、死に引き寄せられるように地上の死者状態でフワフワしています。一見、陽気なイタリア人の盗掘仲間たちもイギリス人のアーサーを利用しているだけだったりして・・・孤独。でもベニアミーナを忘れられないなら、なんでイタリア(カロル・ドゥアルテ)に手出したのさ?アーサーを手放さないベニアミーナとはどのような女性だったのだろう?と気になってしまいました。でも、複合的な話の割には起承転結が緩くダラダラと進むし130分と長いので、途中何度も落ちそうに(>_<) 本当に神話の舞台を現代に移し、さらに国同士の関係性とか織り交ぜながら小難しくした感じで、ベースを知らないと楽しめないんじゃないかな。「幸福なラザロ」の方が分かりやすいと聞くけどどうなんだろう?印象としては得意でない監督さんっぽいけど、観てみようかな。2024年公開。

「ぼくの家族と祖国の戦争」

ピルー・アスベック主演他。友達を守りたい、敵であっても―。1945年4月、デンマークの市民大学。学長ヤコブ(ピルー・アスベック)が、現地のドイツ軍司令官から思いがけない命令を下される。ドイツから押し寄せてくる大勢の難民を学校に受け入れろというのだ。想定をはるかに超えた500人以上の難民を体育館に収容したヤコブは、すぐさま重大な問題に直面する。それは多くの子供を含む難民が飢えに苦しみ、感染症の蔓延によって次々と命を落としていくという、あまりにも残酷な現実。難民の苦境を見かねたヤコブと妻のリス(カトリーヌ・グライス=ローゼンタール)は救いの手を差しのべるが、それは同胞たちから裏切り者の烙印を押されかねない振る舞いだった。そして12歳の息子(ラッセ・ピーター・ラーセン)もドイツ難民の女の子と交流を持ちつつあったが彼女は感染症にかかってしまう。友達を救うべきか、祖国に従うべきか、家族は決断を迫られる。第二次世界大戦末期の知られざる歴史の1ページ。戦時下の極限状況の中、自らの正義を貫こうとした家族の感動の物語。本国アカデミー5部門ノミネート。

10点!!憎しみの連鎖。どちらの気持ちも分かる辛い実話だった。戦時中、ナチスはドイツ国内の困窮にもナチス関係者にならない限り、手を差し伸べなかった印象があるが(クラウス・コルドンの「ベルリン三部作」)、国外へ逃れたドイツ難民の話は聞いたことがなかったので興味深かった。どちらにしろ、戦争は地獄だ。「歩み寄ることはできないのか?」と終盤、ヤコブは言う。歩み寄れるのは、手を差し伸べられるのは、家族を殺されなかった人だけなのかも知れない。命を前に国境も人種もなく、人は皆、平等なはずだし、家族を殺したのは軍人であって難民である一般人ではない。理屈では分かるけど、目の前にしたらやりきれない、抑えきれない感情が沸き上がるのだろう。それでも命は強い。憎しみの連鎖を勇気をもって乗り越えたセアン(ラッセ・ピーター・ラーセン)の言葉は大人のそれより遥かに純粋で強い。この一家は戦後を無事に生き抜くことが出来たのだろうか?実話にインスパイアされた物語で、実話そのものではないから分からないけれど、正しいことをした者が報われる世の中であってほしい。「ヒトラーの忘れもの」もそうだけど、人と人は歩み寄れるし、助け合える。その方が皆生きやすいはずなのに、一部の狂人の一存で世界は廻りがちだ。ロシアとウクライナも、ガザも、世界中の戦争が一刻も早く終わりますように。2024年公開。

「【推しの子】-The Final Act-」

櫻井海音主演他。終劇が始まる―。地方で働く産婦人科医・雨宮吾郎(成田凌)。ある日“推し”のアイドル「B小町」のアイ(齋藤飛鳥)が彼の前に現れた!しかも、アイはなんと双子を妊娠していた!!医師として彼女を支えると決意したゴローだが、アイの出産直前に何者かによって殺されてしまう。次に目を覚ますと、なんとゴローはアイの子ども・アクア(櫻井海音)に転生していた!そして双子の妹であるルビー(斎藤なぎさ)もまた、誰かの生まれ変わりなのであった。出産を隠して芸能活動を再開したアイは、あっという間にスターダムを駆け上がっていった。しかし、B小町の念願のドーム公演当日の朝、アイはストーカーに刺され、アクアとルビーの目の前で死んでしまう。時が経ち、高校生になったアクアとルビーは芸能界に身を投じ、その光と影に飲み込まれていく。アイを殺した真犯人への復讐を誓うアクアは“最後の計画”を始めるのだった。アクアが最後に選んだ結末とは―。【推しの子】終劇―明かされる、<真実>と<嘘>。

4点!!原作は途中までしか読んでません。ラストはほぼ原作通りなのかな?ドラマ編必須の構成の割には過去パートが長くて、ドラマから入った人は時間勿体ないと感じると思う。でも、成田凌と稲垣来泉のラストシーンが切なくて物語を上手く加速させていたのは確実。全体としては駆け足の割にはいらない部分を大胆にカットし、上手くまとめたなという印象だが、クライマックスの対峙と復讐の結末にもう少し時間を割いても良かったと思う。完璧な復讐なんてないということだろうけど、あっさり、モヤモヤの残るラストになってしまった。存在感は齋藤飛鳥と原菜乃華が群を抜いている。齋藤飛鳥は初主演映画「あの頃、君を追いかけた」の時からすごい透明感とオーラを放っていたから、どこへ向かうのか分からない感じだが、本格女優になるなら成功すると思う。原菜乃華は脇役なのに歌も演技も上手過ぎて(笑)まぁ、原作ファンが多い作品というのは脇もしっかりしてないと炎上するから、原と茅島みずき辺りはベストキャスティングなのだろうけど、上手過ぎて笑う(^^;)映画というよりは漫画、アニメを忠実に追ったものを観ている気分だったから盛り上がりに欠けていたけれど、再現度は高いと思う。確実に原作ファン向け。2024年公開。 

「アングリースクワッド 公務員と七人の詐欺師」

内野聖陽主演他。騙して奪って脱税王から10億円を納税させろ!マジメな税務署員・熊沢(内野聖陽)は、ある日、詐欺師の氷室(岡田将生)の罠に掛かり大金を騙し取られる。親友の刑事の助けで氷室の居場所を突き止めるが、「見逃してくれたら、おじさんが追ってる権力者から脱税した10億円を徴収してあげる」と持ち掛けられ、葛藤の末、“ある復讐”のために熊沢は氷室と手を組むことを決意する。マ・ドンソク主演の韓国ドラマを「カメラを止めるな」の上田慎一郎監督が映画化。クセ者ぞろいの詐欺師集団が壮大な税金徴収ミッションに挑む痛快クライム・エンターテイメント。

5点!!役者が揃うまでに50分使ってダラダラしている割には、後半の畳みかけが弱い。近年、コンゲームものは結構作られているので、観客は見慣れているはずで、その中では驚きも二転三転もない。中盤で実は~的なところは殆ど明かされてしまっているので。でも、ドラマを2時間にしたにしては綺麗にまとまっていたと思います。マもどっかに出てきて欲しかったな(笑)ハラハラドキドキの命懸けというよりは家族ドラマ、友情寄りでぼんやりしてしまうのは、日本のダメなところだと思う。観客が期待しているものと制作陣が描きたいものとのズレを理解していない。「カメ止め」もそこまで面白かったわけではないけれど、観客を巻き込んだ盛り上がりはあったので、そういうのを期待してしまったかな。2024年公開。

「六人の嘘つきな大学生」

浜辺美波、赤楚護衛主演他。あの就活で、嘘に殺された。誰もが憧れるエンタテインメント企業「スピラリンクス」の新卒採用。最終選考まで勝ち残った6人の就活生に課せられたのは“6人でチームを作り上げ、1か月後のグループディスカッションに臨むこと”だった。全員での内定獲得を夢見て万全の準備で選考を迎えた6人だったが・・・急な課題の変更が通達される。「勝ち残るのは1人だけ。その1人は皆さんで決めてください」会議室という密室で、共に戦う仲間から1つの席を奪い合うライバルになった6人に追い打ちをかけるかのように6通の怪しい封筒が発見される。次々と暴かれていく、6人の嘘と罪。誰もが疑心暗鬼になる異様な空気の中、1人の犯人と1人の合格者を出す形で最終選考は幕を閉じる。悪夢の最終面接から8年後。スピラリンクスに1通の手紙が届くことである事実が発覚する。それは、<犯人の死>。新たな犯人を告発する手紙の内容に残された5人は、真犯人の存在をあぶりだすため、再びあの密室に集結することに・・・。嘘に次ぐ嘘の果てに明らかになる、あの日の「真実」とは―。嘘つきなみなさまへ捧ぐ、極限の密室嘘つきミステリー。

1点!!どんでん返しあるっていうから期待して観たら・・・何この拍子抜けストーリー。人間誰でも人に言えないことのひとつやふたつあるよ~それを墓場まで持っていけるかいけないか(爆)という腹黒い人間なので、全員善人って何それって思っちゃいました(爆)あと犯人の動機薄い。就活生が嘘にテンパるのは分かるけど、犯人の動機も仕掛けも感性も薄くて、本当に有名大学の就活生なのか疑ってしまったほど。そして意味ありげな木村了は何だったの?どうして辞めたの?原作はベストセラーなんですよね。。。面白いのかな?誰か読んだ方、感想プリーズ。2024年公開。

「ホワイトバード はじまりのワンダー」

アリエラ・グレイザー主演他。やさしさこそ、ほんとうの強さ。いじめによって退学処分になったジュリアン(ブライス・ガイザー)は、自分の居場所を見失っていた。そんな中、ジュリアンの祖母のサラ(ヘレン・ミレン)がパリから訪ねて来る。あの経験で学んだことは「人に意地悪もやさしくもしない。ただ普通に接することだ」と孫の口から聞いたサラは、「あなたのために話すべきね」と自らの少女時代を明かす。時は1942年、ナチス占領下のフランスで、ユダヤ人であるサラ(アリエラ・グレイザー)と彼女の両親に危険が近づいていた。サラの学校にナチスが押し寄せ、ユダヤ人生徒を連行するが、サラは同じクラスのジュリアン(オーランド・シュワート)に助けられ、彼の家の納屋に匿われることになる。クラスでいじめられていたジュリアンに何の関心も払わず、名前すら知らなかったサラを、ジュリアンと彼の両親は命がけで守ってくれる。日に日に二人の絆が深まる中、終戦が近いというニュースが流れるのだが―。「ワンダー 君は太陽」には、もうひとつの物語があった。“問題児”ジュリアンを変えた<おばあちゃん>の衝撃と感動のヒューマンドラマ。

10点!!なぜサラの娘夫婦がモンペに~(涙)という部分を除いては完璧でした。親切には大なり小なり勇気が必要で、それが人と人との絆を繋げ、ひいては命を紡いでいく、そのはじまりの奇跡のお話。サラ役のアリエラ・グレイザーがおめめクリクリの小動物系でめちゃめちゃ可愛かったです♪サラの一人きりでの寒い納屋生活はどんなに過酷だっただろう。子ども時代に親だけでなく、大切な友人とすべてを失ったサラ。それでもサラにはまだ手を差し伸べる人たちがいた。人と人との絆は凄い。こんな話聞いちゃったら、根は悪い子じゃない現代ジュリアンは変わるしかない。前作で勧善懲悪な結末を迎えたと思ったら、続編でちゃんと救い出すだなんて、粋!世界観もダークファンタジー調でとても素敵でした。そしてエンドロールでサラが本当に幸せだった時代を想ってまた涙。久々に心が潤った~ありがとうキノフィルムズ(キノLOVE(笑))。2024年公開。

「碁盤斬り」

草彅剛主演他。ある<冤罪事件>に巻き込まれた男の怒りを目撃せよ!父娘の絆を斬ってもなお、武士には守らねばならない誇りがあった。浪人・柳田格之進(草彅剛)は身に覚えのない罪をきさせられた上に妻も喪い、故郷の彦根藩を追われ、娘の絹(清原果那)とふたり、江戸の貧乏長屋で暮らしている。しかし、かねてから嗜む囲碁にもその実直な人柄が表れ、嘘偽りない勝負を心掛けている。ある日、旧知の藩士により、悲劇の冤罪事件の真相を知らされた格之進と絹は、復讐を決意する。絹は仇討ち決行のために、自らが犠牲になる道を選び・・・。父と娘の、誇りをかけた闘いが始まる!これが日本の<復讐>だ。感動のリベンジ・エンタテイメント!

9点!!落語が原作だけど復讐劇を加えています。落語は完成されたものだから、もうひとつの復讐を加えたことで話がブレたと感じました。でも映画的な肉付けとしては、加えたことで内容が濃くなったのも事実。加え方と辻褄合わせをもう少し綺麗にしてくれていれば良かったかな。でもノワール劇でみせてくる白石監督がこういうシャキッとかっこいい時代劇を作ることを知れただけでも◎。弥吉に娘任せるのは苦労しそうだけど(爆)SMAPが苦手で避けていたけれど、草彅さんが昔と比べて随分上手くなっていたので、違和感なく観れました。ツッコミどころはあるけれど、人情劇は人と人との繋がりの良さを感じさせられたし、澄み渡った世界観が心地良く、テンポも良い。面白い作品でした。2024年公開。

「ヴェノム:ザ・ラストダンス」

トム・ハーディ主演他。エディ、サヨナラだ。死が二人を―分かつまで。ジャーナリストのエディ・ブロック(トム・ハーディ)に地球外生命体シンビオートが寄生し誕生したヴェノム。強靭な肉体と鋭い牙、真っ赤な舌で人を喰らう<最も残虐な悪>であり、スパイダーマン最大の宿敵。大殺戮を招く最狂ヴィランのカーネイジ(ウディ・ハレルソン)との激しい死闘の中で、エディとヴェノムは一心同体となり共闘、深い信頼関係で結ばれた最強最高バディとなったが、事件の末、警察から追われる存在となってしまう。<俺たち2人>でいることが世界を破滅に導く―ヴェノムに隠された秘密が明かされ、それを狙う最強シンビオートとの壮絶な戦いが描かれる。シリーズ最大スケールのアクションと感情を揺さぶられる<俺たち>のラストダンス。

7点!!この「ラストダンス」を観る為だけに1、2を一気見した人です。そして「X-MEN」シリーズ同様、ちゃんと楽しんでいるのに序盤って寝落ちするっていう(見直しました)。なんでしょうね、アクションシーンが多いからかな?トム・ハーディはおっさんモードとラブストーリーモードのどちらも対応出来て、見た目が全然違うので不思議な役者さんだなと。回を増すごとにどんどん愛おしくなるヴェノム~~涙活しまくりなラストでした。もう会えないのかな?復活してくれないのかな?寂しいな。ヴェノムLOVEになるシリーズです♪2024年公開。

「動物界」

ロマン・デュリス主演他。この世界では、人は、動物になる。近未来。人類は原因不明の突然変異によって、徐々に身体が動物と化していくパンデミックに見舞われていた。“新生物”はその凶暴性ゆえに施設に隔離されており、フランソワ(ロマン・デュリス)の妻ラナもそのひとりだった。しかしある日、移送中の事故によって、彼らは野に放たれた。フランソワは16歳の息子エミール(ポール・キルシェ)とともにラナの行方を必死に探すが、次第にエミールの身体に変化が出始める・・・。人間と新生物の分断が激化するなかで、親子が下した最後の決断とは―?フランス動員100万人突破!観る者の常識を覆すアニマライズ・スリラー、解禁。第49回セザール賞最多12部門ノミネート作品。


6点!!映像は美しかったけれど、展開に意外性や驚きはないかな。というか、なぜ麻酔銃を使わない?隣国では共生を図っているのに殺してたら後々国際問題になるよねっていう。凶暴性があっても小さい動物に変異するなら飼えるのかな?人間の大きさのままモルモットとかになるなら無理だけど(爆)鳥さんは人間の大きさのままだったから大きさは人間のままなのか?迷っていた父親が息子の変異で意思を固めていく過程が良かった。そんな父親をなんだかんだで最終的には信頼し頼りにしている息子との関係性も良かった。でもドキュメンタリーなの?というくらい起きる展開をただただ追っかけているだけで2時間超えは長い。世界観的に、ちょっとヨルゴス・ランティモス的パンチを期待してしまった(無理だろ)。これでセザール賞最多なの?映像が綺麗だから?2024年公開。

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